温熱治効理論

(パンフレットを元に、読みやすいようにテキストにしました、誤植の責任は私にあります。不安な場合は元の画像のほうを見てくださいー管理人)

諸云

フランスでは全国の医師の一割が針灸を習い、実際に治療しており、ピカソが針治療で坐骨神経痛を治した話は有名です。
ドイツもそうです。ある日本人医師がドイツに行った時、針灸治療の質問攻めにあい「こんなすばらしい治療法をなぜ大学で教えないのか」と云われて困ったという話があります。
針灸治療の優秀性は、科学的研究と数千年来の臨床的事実によって立証されていますが、相変わらず艾(もぐさ)に頼ってい火傷治療しているのが現状です。これを電化すべく過去に幾つかできましたが、どれも欠点があり、温熱治療器は従来のものに改良を加え、温度の調節を自由自在にして、適温が得られるようにしました。これは初めて熱刺激の科学を持ち、合理的なものとする事ができたのであります。
温熱刺激療法は、あらゆる病に卓効があり、急性病はもとより、慢性病でも大抵治るものです。病気の予防や健康保持にご使用ください。
以下、その原理と使用法を述べることに致します。

温熱刺激作用

我々の皮膚はただのフロシキではなく、ちょっと想像も及ばない程精密にできています。なぜならば、皮膚は外界と接するからでありまして、例えば体温を調節する役目から、体内の臓器、筋肉、血管、神経等を外部の光や暑さ、寒さ、湿気などの化学的、物理的作用から一切の悪い影響を保護し、ビタミンDをつくり、知覚、分泌、排泄、呼吸などの作用をも営むのであります。
温熱刺激は、この皮膚の働きを利用したもので、例えば内部のどこかに病気が起こると、それを支配している神経と連絡のある皮膚の部分に、反応点が反射的に現れます。
この反応点を漢方医学では「ツボ」と呼び、西洋医学ではヘッド氏知覚過敏帯と呼んでいます。温熱刺激でこの反応点を刺激しますと、反射的に神経を伝わって逆に患部にとどき、熱刺激の働きで、自然良能がふるい起こされて、患部の病的変化を正しい生理現象に転換させるのであります。
はじめは誰でも「外からの刺激が果たして内臓まで働くのだろうか」という疑問をもちますが、一度温熱刺激の効果を経験されると改めて皮膚の不思議に驚くのであります。
これは温熱刺激が、適度に、適所に与えられから、体の中の自然良能があざやかに働くのでありまして不思議でも何でもありません。
どんな治療法でも「刺激を与えて自然良能をよくする」のですが、自然良能を最もよくするのが「熱」ですから熱刺激を主体とする電子温灸器が卓功を発揮するわけです。
何故熱が一番よく効くかと云えば「生命は熱である」からです。古典万安方にも「火気達して而して癒す也」と書かれており、調理も、栄養の自己化も微妙な熱の働きを仲立ちにしなければなんの役にも立たないのです。

なぜ優れているのか

もぐさ灸の温度は七〇度乃至一三○度Cですが、この温度は熱すぎて学者の実験によりますと、四○度〜六○度Cの間が一番よいとされています。もぐさ灸はカサブタができてからこの温度に適合しますが、治療器は自由自在に調整できますので、自分の好きな温度がいつでも平均的に得られ、初回から適合温度で治療効果をあげられます。また個人差や部位差に対しても適応させる事が出来ます。
要約すれば、
一、生理的に合理的であり、臨床的に痕跡を残さず、必要以上の熱さを忍耐させることなく、気持ちよく治療の目的を達することができます。
二、温度の調節が自由ですから、高温を与えてはいけない高血圧や小児でも安心して治療できます。
三、取扱いが簡単ですから、医学の心得がなくても、たやすく技術の習得ができ、針灸知識のない方でも○・五mmという小さいツボに対して治療ができます。
四、治療能率がよいので針灸よりも短時間にして針灸の治療効果があげられます。
五、熱源は電気ですから、艾灸のように汚れず、熱針のアルコールと違って、扱いよく使用途中でアルコールが切れるような事はありません。
六、形が軽小に出来ており、どこへでも持ち運べるので往診や旅行に携帯が便利です。
七、温熱刺激の作用は生体機能の復活と増進にあり、従って薬物のような副作用は全くありません。

東洋医学理論

「理屈はどうでもよい、治りさえすればよい」と仰云る方がありますが、今日のような科学時代に理論抜きの、よいからやると云った式や、色々やったらどれか当たるだろう式のやり方は感心しません。恰も宇宙にある特定の星を望遠鏡で探すようなもので容易な事ではありません。
然し科学である天文学に頼ればピタリと一回でその星が捉えられるのであります。
これと同様に医学と云う科学理論を応用しますと、そのものズバリ的外れのない成績をあげ得るのであります。
治療器がどんなに優秀であっても科学を抜きにした使い方では折角の利器が死んでしまいます。
そこで治療器を使用するに当たっては、全体医学である東洋医学の理論を一通り知って頂きたいのです。詳細は著書や講習会などによって頂くとし、ここでは是非知って頂きたい要点だけを述べることに致します。
身体に故障が起った場合、自然良能つまり体の異和を正常にしようとする自然の働きがあるものです。肩こり、腰痛、発熱、疼痛、嘔吐、下痢等と云った症状はその一つの現われで、異和を治そうとする働きなのであります。
我々は「自然良能が弱って細胞が完全に働いていない状態」を病気としております。たとえば目が悪いとき「眼病」だけでなく必ず体のどこかに自然良能の低下を発見します。外傷とか毒物を飲んだ時を除いて必らずそうなのです。
この場合、肝臓の機能をよく調整してその根本から治すのであります。そこに温熱刺激の信じられない程効くという奇跡が現れる訳です。
医科学である生理学によれば、この自然良能の本体が、肝臓・脾臓・腎臓の三つであり、色々の症状は、これらの働きが正常でないために起こっているのであります。
従ってこれらの症状をなくする、俗に云う病気を治すがためには、この働きが悪くなっているのを良くする方法をとればよいのです。只それだけのことであります。
それでは一体どうしてこの働きが悪くなるのか、それを先ず検討し、その原因を知り、悪くなる原因を作らない事であります。一言にして云えば、自然界に生きていながら自然に反する生活をした結果であり、具体的に申しますと、
一、食事のとり方
二、身体の使い方
三、環境の如何
四、心がけの良否
大体この四点が天理に、そむいているからと云えましょう。本人の生活は勿論のこと、親の生活の間違いが子に及ぼすと云った先天性のものもあります。
先ず、肝臓に一番関係するものは食物で、食物は美食よりも粗食の方がよく、理想からすれば主食を胚芽米とし、副食を野菜、海草、果物等中心とする精進料理がよいのであります。病気を治そうとするには先ず今迄の悪習慣を改め、食養生をせねばなりません。
肝臓は脾臓と共に小腸(臍下丹田、丹心)に直接関係が深く、これを健全にせねばなりません。食欲不振、食物の好き嫌い、栄養失調等は肝臓の関係であります。
また、解毒作用、殺菌作用、血液循環の調節等の重要な働きがある故に、肝臓を悪くすることは直ちに生命をおびやかす事になります。
次に、脾臓はリンパ系の中心をなし、脂肪代謝に関係する故に、アレルギー体質、痰咳、荒性、油性、いぼ、魚の目、こぶ、しこり、各種の皮膚病等に関係し、また胆汁を支配することから、慢性胃腸炎、胃潰瘍、胆嚢炎、黄疸等の原因となり、甲状腺を支配する関係から、バセドウ氏病、高血圧、低血圧の原因ともなります。
腎臓の大事な働きは、血液の清浄作用で、これが阻害されると、血管を弱くして動脈硬化や脳出血になったり、神経痛を起こすことになります。
以上のことから、病原は肝臓、脾臓、腎臓、丹心、足心の五個所となり、治療器による治療はこの五個所に決定付けられるのであります。

診断

温熱刺激は治療法としてのみでなく、針灸の基本とされている経絡の応用により、身体のどこに故障があるかを発見できる確実な診断法としても役立つのであります。
経絡とは、内臓の反応点が皮膚面に一つの線として系統立って現われていることを指すもので、手足に夫々六本づつ計十二本と体の表裏に一本宛あり全部で十四本あります。
器の熱せられたローラーを皮膚面に転がすと内臓が清浄な場合は、それに該当する皮膚面はローラーの温度だけを感ずるのですが、若し内臓に異状があると刺すような熱さを感ずるのです。
これは内臓が正常ですと、それに該当する皮膚も正常ですが、異常があると皮膚面が過敏となるからであります。
これに一寸した内臓の異常であっても皮膚面に現われるため診断が確実にでき、誤診する事は決してありません。
十頁の写真に示すように足の内側に脾臓、肝臓、腎臓。外側に胃、胆、後側に膀胱の経絡があります。
診断に当っては、第一にこの内側の肝、腎、脾の何れに原因があるか判定します。例えば肝経が熱ければ、次に体の方で肝臓の部(右季肋部)の箇所を検べれば熱く、必らず足と一致するということで確認できます。
次に手では、内側に肺経、心包経、心経の三つと、外側の大腸経、三焦経、小腸経の三つを検べ、図示のような箇所により、どこが悪いか診断できます。




レントゲン検査の結果、要注意、再検査という時は大抵肺経の該当部に刺激感があり、また胸部の患部にも同様の刺激感があるものです。その成否は左右を比較すれば判ります。
胸の痛みが、肋膜炎か肋間神経痛か。腹痛が虫垂炎かどうか。心臓の調子が悪いのが心臓の働きが悪いだけか、あるいは狭心症の恐れはないかなどと云った事が、手の経絡によって確実に診断できるのであります。
身体の調子が悪いというA君は、何が原因かを、はっきりさせるために人間ドックへ入って精密検査を受けたのですが、別に悪い所が発見されず、理想的な健康体とされたのであります。ところが温熱刺激で検べますと、六ケ所も異常が発見されました。


B子さんは別に悪い所はないが、道を歩いていると急に下腹部から上に突き上げるような状態が起こり、苦しくなって道に坐り込んでしまう。いくら医者の診断を受けても悪い所が発見できず、民間治療も色々試みたが、どうしても治らぬというのです。ところが温灸器で検べた処、脾臓と左腎臓が悪いことが発見できて、治療数回で全治したのであります。
またC君は発熱が一ケ月も続き、何処の医者でも原因が発見できなかったのですが、温熱刺激で腎臓の異常が判り、二回の治療で下熱しました。
かように温熱刺激によれば診断が容易に出来るから、治療の方針が立つもので、この診断には狂いがありません。然し深入りした病人では往々にして末梢神経が麻痺している為、当然あるべき刺激感がない場合があります。また、くすぐったく感ずるために誤診するような事もあります。かかる時は、頭頂部の「百会」というツボを一〜二回刺激して背柱の両側を治療することによりマヒがある程度除けられるものです。
刺激感のないものが、感ずるようになれば治りが早いものです。

治療

従来の多くの治療法は、大体病名に対して治療個所を定めているようですが、本会でおすすめする治療器による治療は、病名の如何に拘わらず、前記の診断に基づいて根本原因を明らかにし、先ずその個所の治療に重点を置くのであります。
例えば、腎臓が主たる原因としたら、腎臓と足心を中心として丹念に治療し、続いて肝臓、丹心、脾臓におよび、最後に末梢部を治療するといった方法をとるのであります。
要するに、如何なる場合でも、それが外傷であっても、上記の五個所は必ず治療するのであります。
治療に当たっては手足、体の前面、背面と三方面から行ない、時間は三十分乃至一時間で終ります。
慢性病は一日一回でよいが、急を要する場合は三時間の間隔をおいて一日何回も治療します。然し身体の状態によっては一日一回で、しかも短時間の治療でも反応(ひどく疲れたり、時には発熱する)がひどく、このため「この治療は自分に合わぬ」と云ってやめる人が往々ありますが、この反応は薬の副作用と違って、治療によって全身の新陳代謝がよくなったため、体内の毒素が出廻って来る異和感であって、病気が悪くなってのではありませんが、我慢するのも程度がありますから、そこは治療時間を短縮するとか、隔日おきに治療するとかして手加減する必要があります。
このように慢性病の場合、治っていく経過中に反応が出る事がありますが、心配せずに継続使用してください。反応が出たら快方へ一歩向ったものと御了解下さい。
次に幾つかの病名を挙げ、各々につき治療法を説明致しましょう。
一、肝臓病・肝炎・ビールス性肝炎・肝硬変・黄疸等
肝臓と腹部の腸全体、それに脾臓及び腎臓にもかけます。肉の食べ過ぎや飲酒はやめて下さい。
二、腎臓病・腎炎・ネフローゼ・腎結石・萎縮腎等
腎臓病は腰のこりや足の冷えによるものが多いので、腰と足の血液がよく流れるようにかけます。
絶対安静では治りませんので、適度の運動をして下さい。
三、心臓病・心臓弁膜症・狭心症・心筋梗塞・神経性心臓病等
心臓病の原因は肝臓か腎臓にありますので、肝臓か腎臓をよくすれば治ります。
神経性心臓病は甲状腺にかけます。
四、癌
癌を発生する体質を改善すれば初期の癌でしたら治りますが、大きくなりすぎたのは困難です。
平素から肝臓、腎臓、脾臓を強化しておけば癌にかかる事はありません。癌を治す力は肝臓、腎臓、脾臓にあります。
五、糖尿病
糖尿病は肝臓、腎臓、副腎などにその原因がありますので、これらを丈夫にするのが、治療法であり、予防法でもあります。食事の注意も忘れてはなりません。
六、高血圧・中風
高血圧は肝臓や腎臓から来ますので、全体治療によって体質改善してください。
中風は腎臓から来るので腎臓をよくして、脳の側頭部の運動神経の中枢にもかけます。
七、胃腸病
胃腸病は肝臓及び脾臓に原因がありますので、これらを強化する事によって治ります。
八、神経痛・リウマチ
血液浄化作用の低下により神経痛が起こり、リンパの循環が悪いからリウマチが起こるのです。
従って神経痛は腎臓に、リウマチは脾臓にかけます。
九、喘息
喘息は迷走神経の痙攣によるものですので、背中の交感神経の働きを強化するようにかけます。
心臓性喘息は腎臓にかけます。
十、婦人病
婦人病は大抵、腎臓か副腎にその原因がありますが、子宮筋腫や卵巣嚢腫は脾臓から治します。
十一、痔
痔は肝臓と腸が弱いために起きますので、肝臓や腸を強化し、腰や仙骨などにもかけます。
十二、眼病
視力に関係のあるものは肝臓から治します。
その他眼瞼やコメカミ及び後頭部の目の治療点にもかけて下さい。






十三、耳の病
耳の病気は腎臓が原因ですので、腎臓にかけます。
また、耳の前や下に耳にもよく効くツボがありますのでかけます。大臀筋の上にも耳に効く治療点があります。(十一頁参照)
十四、鼻の病
鼻の病気も全身病ですから全身をよくかけて、鼻翼及び眉毛の上の所にもかけます。
十五、打撲・捻挫
局所の特に熱感のある点をさがしてかけると速効します。