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「頭寒足熱」は間違い。頭寒は不健康のもと 「頭温足温」に言い換えよう!

2023年10月23日更新

頭寒足熱は間違いではないかと思います。正しくは「頭温足温」と言われるべきでしょう。少し調べてみた結果を書きます。


目次


北国の人は、外で首や頭をむき出しにはしない


今日は大寒です。(2022年1月20日)「頭寒足熱」をうたって、いろいろな商品が売られています。
しかし、頭が寒くて、足が熱い、などという、文字通りに受け止めれば、特に大寒の今、ちょっとゾッとする話です。
頭寒足熱とは、冬の火渡りにふさわしい表現ですね。

しっか着込んだ北国の人

北国に住んでいる人で、冬、外で、頭をむき出している人などいません。下手をすれば、凍死です。皆、マフラー・防寒帽などで、寒さを防いでいます。
頭寒足熱など、少しのんびりしたことが言えるのは、日本の中部以南の地方だからでしょう。それでも、とても健康に良さそうには考えられません。
足を(温かくなら理解できますが)熱くするというのも、変な話です。お灸をすえるのでしょうか?

真夏でさえ、頭をエアコンで、寒いほどに冷やすのは、どう考えたって不健康です。(真夏に足を熱いほどに温めて、どうするんだ、と言いたいです。熱中症、アセモの原因です。)

首が冷えやすい私は、10年来ずっと「頭寒足熱」に対し、はっきりした疑問を感じてきました。当時も少し調べたのですが、これは、というものには当たれませんでした。今、調べ直すと、優れた研究や資料が出てきています。それを参考にして、考えをまとめてみました。

頭寒足熱は、どうしたっておかしい、せめて頭温足温


続 日本のことわざ(金子武雄 (教養文庫)昭和44年初版)
続 日本のことわざ
には
「頭寒足熱-頭が冷えていて、足の温かいのが健康体であるという意にも、また、頭を冷やし、足を温かくしておくのが健康のためによいという意にも用いられている。」と書いてあります。この辺が実際に使われている意味だと思います。それなら、「頭冷足温」と言われるべきでしょう。

足温はまだ良いとしても、頭冷はいかがかと思います。高熱時に頭を冷やすことはありますが、暑い時に汗を拭くのは必要だとしても、暑いからといって、頭(特に首)を冷たくするのは、体に悪いと言われています。
暑い時期に、タオルを首に巻いたりしますが、あれは大変合理的で、流れる汗は拭き取って、汗が引くと(とりわけエアコンが効いている所など)早速首が冷えてきますので、タオルを取り替えれば、今度は保温に早変わりするのです。タオルでは見栄えが悪いので、スカーフを巻いて、取り替えるようにすれば、見栄えの問題も回避できます。
もちろん冬には、首から上が冷え切ってつらい気持ちになった体験をされた方は、多いのではないかと思います。口も、鼻も、耳も、目も、冷えが悪いことは、誰でも経験されていることではないでしょうか。

御高祖頭巾

江戸時代には、婦人は御高祖頭巾(おこそずきん)などで、頭、耳、首を覆い、防寒していたと言われています。「快傑黒頭巾」を待つまでもなく、昔は寒くなると頭巾を普通にかぶったみたいですね(?)。頭巾の文化を復活したいものです。

航空頭巾

空では、文字通り頭寒になって危険です。防寒のための頭巾は命を守るものです。

首をマフラー、イヤマフ、防寒帽、それもいいですが、まとめて頭巾だと簡単ですね。あとは、ファッション的な問題だけです。

頭巾の簡単な作り方を、記事にしました。ご参考にしてください。ただ、お出かけには、向かないかと。

最近は、新型コロナウィルス対策で、マスク着用が当たり前のようになっているのは、うれしいことです。顔を冷えから守れて、肌や唇もきれいになってくると思えます。インフルエンザが激減しているというのは、マスクのフィルター効果だけでなく、鼻・口の冷え防止効果もあるのではないかと思います。

首から上の保温は、健康のために重要


「頭寒足熱」の罪は、なんと言っても、首から上の保温について無頓着にさせることです。とりわけ、デコルテ(日本由来ではないのですが)など、真夏を除けば不健康の極みです。

特に冬には、室内でも、首から上も暖かくすることが、大切だと思います。寝ている間にも、例えば、腹巻きを短く切って、すっぽりかぶり、顔だけ出して寝るようにすると、布団から出ている部分を保温できて、血液循環も良くなります。日本人の場合、大概は冬、とりわけ寝ている間の冷えで1年の歳を取リます。そう思いませんか?

首から上の保温は、アンチエイジングに役立ちます。20歳くらいの人たちが、10年で急速に老けてしまうのは、人生経験だけでなく、ファッション優先で、特に寒い時にも、首から上をさらけ出していることが、大きく影響しているのではないかと、私は体験的に思います。

首については、特に、首の後ろを暖かくすることが大切だと、堀田修医師が
「つらい不調が続いたら 慢性上咽頭炎を治しなさい」
で述べておられます。

首の後ろを温めると、上咽頭の血流がよくなり、上咽頭炎に特有のうっ血状態が改善します。
首の後ろを温める便利な道具としては電子レンジで温めるネックウォーマーや、使い捨てカイロを用いたネックウォーマーなど様々なものがあります。
私のお勧めはゴム素材で軟性の昔ながらの湯たんぽです。
・・・
夏場に体調を崩す原因として、冷房などによる首の後ろの冷えは重要で、慢性上咽頭炎の悪化につながります。

とのことで、首の後ろの湯たんぽを特に勧めておられます。
(当研究所の記事もご参考ください)

「頭寒足熱」が、健康に良いとは言えないことは、理解していただけたのではないかと、思います。

「頭寒足熱」という表現の由来


次に、「頭寒足熱」が経験的なことわざ、というより、どうも、意味のネジ曲がりを経てきたものではないか、という点について触れてみたいと思います。
「冷静活発が長生きの秘訣」というオリジナルの言葉が、頭寒足熱と訳されていまい、さらに足を温める健康法の表現として使われるようになった、ということらしいのです。

予想に反して、「頭寒足熱」という表現は中国由来のものではなく、その初出は実は、日本だそうです。外国には、そういうことわざは、ないそうです。

オランダの医師、イギリスの詩人、そしてあのオールド・パー

四字熟語根掘り葉掘り9:「頭寒足熱」とオランダの名医
によれば

18世紀のオランダに、ヘルマン・ブールハーフェという医学者がいました。大学で教鞭を執り、いちはやく臨床教育に取り組み、多くのすぐれた医師を育てて、医学の発展に大きな足跡を印しました。
この人が亡くなったとき、一篇の原稿が遺されました。タイトルは、「医学の秘法」。ブールハーフェ先生のこと、どんな重要なことを書き遺してくれたのかと期待しながらページをめくると、最初に「頭を冷やし、足を温めること」とあるだけで、あとは白紙だったそうです。
ここから生まれたのが、「頭寒足熱(ずかんそくねつ)」という四字熟語である。……という話があるのですが、いやいや、おもしろすぎますよね?
実際、ブールハーフェ先生が亡くなったのは、1738年。一方、「頭寒足熱」は、古くは1651年に序文が書かれた『崑山集(こんざんしゅう)』という俳諧の書物の中に、「すそ野あつし 頭寒足熱 ふじの雪」と使われています。
これでは、時代が合いません。でも、だからといって、「頭寒足熱」がヨーロッパに由来する四字熟語である可能性がまったくないわけではありません。
英語に、A cool mouth and warm feet live long.(口を涼しく、足を暖かくすれば長生きする)ということわざがあります。これは、古くはジョージ・ハーバートというイギリスの詩人が編集したことわざ集、『ヤクラ・プルデントゥム』に出て来るもの。そして、この書物の刊行年が、くしくも1651年なのです。

ということです。
よくも、ここまで調べてくださいました。大変ありがとうございます。
A cool mouth and warm feet live long.
というのは、どうも、スコッチで有名なオールド・パー(トーマス・パー)

オールド・パー(トーマス・パー)

が長生き(152歳まで生きたと言われています)の秘訣を聞かれた時の答え
Keep your head cool by temperance and your feet warm by exercise.
から来ているという説が通説らしいのです。
cool head とは、冷静さ、冷静な人、temperance は、節制、自制という意味ですから、頭は冷静に、足は活発に動かして温かく、という意味になりますね。、温度として頭を冷たくという意味ではないわけです。現代的な意味での「頭寒足熱」に相当する英語のことわざはない, と言われています。

トーマス・パーが死んだのは1635年(日本では3代将軍、徳川家光の時代)。
「ロンドンで稀代の人物として注目を浴びることとなったが、おそらく食事と環境の変化がその死期を早めた。 パーは死後、チャールズ1世の手配により、1635年11月15日にウェストミンスター寺院に葬られた。」(ウィキペディアより)そうです。

ルーベンスの描いたトーマス・パー

チャールズ1世の依頼により、当時在英オランダ大使であった、ルーベンスが描いたものが、ウイスキー・オールド・パーに使われている絵(このすぐ上の図)、だというのは、有名な話のようです。

トーマス・パーのことについて、この頭寒足熱のことから始まって、興味のおもむくまま調べて、当研究所本館に博物館を開設 しましたので、そちらもご覧ください。

その崑山集(1651年(慶安4)刊)の少し前の頃に、日本に受け入れられた言葉なのでしょうね。う余曲折はあったものの、当時としては、かなりのスピードでイギリスからオランダ(これは、ルーベンスの絵からもうかがえるように、ほぼ即時でした)、日本に伝わったのですね。
俳諧という文学の世界ですから、頭寒足熱という、新しい言葉を面白く思って(多分、ほめてというよりは、訳語をからかうような感じで)、詠んだ、と考えるべきでしょう。トーマス・パーにちなんだこの訳語を、印象深く受け止めた日本人がいた、ということですね。

崑山集に当たってみますと、「すそ野あつし 頭寒足熱 ふじの雪」の句は、「長頭丸(ちょうずまる)」(崑山集の選者・松永貞徳のペンネーム)の作です。「夏部」の「暑気」の項にあります。直前の句は同じ長頭丸の、(真夏に比叡山に登った人の話を聞いて)「火焔ほどのぼるや暑き不動坂」です。富士山の麓を登ることを想像して(=麓が暑い、麓を歩く足が熱い)、それに引換え頂上の雪でさぞ涼しげな富士山、というような意味合いではないかと思えます。頭寒足熱という訳語を面白く思って、本来は冷静活発の意味であるのを知りながら、あえて、寒暑の温度の意味に変えて遊んでいるのでしょうか。延命息災のような意味はうかがえないと思います。

ちなみに、崑山集の名がちなむ「崑山」とは、(スーパー大辞林によりますと)「中国の西方にあると考えられた霊山。黄河の源をなし、玉(ぎょく)を産し、不死の仙女西王母の住む所とされた。」だそうです。同じように目を楽しませてくれる、という趣旨で名付けたそうです。

養生訓の貝原益軒は?

最初に保健衛生ということに体系的に取組んだ、貝原益軒(1630年~1714年)の養生訓は、『頤生輯要』(1682年)をもとに、要約して、1713年に書かれたというものです。

養生訓

崑山集から約60年後に書かれたものですが、その中には、「頭寒足熱」の言葉はなく、養生訓の内容は、冷静活発、を基調にしています。
例えば、

養生の術は、安閑無事なるを専(もっぱら)とせず。心を静にし、身をうごかすをよしとす。身を安閑にするは、かへつて元気とどこほり、ふさがりて病を生ず。
・・・
人の心は、つねに静なるべし。身はつねに動かすべし。
・・・
身体は日々少づつ労動すべし。久しく安坐すべからず。毎日飯後に、必ず庭圃の内数百足しづかに歩行すべし。雨中には室屋の内を、幾度も徐行すべし。この如く日々朝晩(ちょうばん)運動すれば、針・灸を用ひずして、飲食・気血の滞なくして病なし。

こうした趣旨が、繰り返し書かれています。

貝原益軒は、長崎に医術を学び、江戸、京都にも本草学や朱子学などを学んだことのある、筑前国(現在の福岡県)福岡藩の人でした。朝鮮通信使への対応も一時仕事としていたようです。外国の情報に接する機会は、多いほうだったと思いますが、頭寒足熱という表現は、貝原益軒には伝わらなかったのかもしれません。しかし、現代的な意味での頭寒足熱は、貝原益軒としては受け入れられないものだったでしょう。

夏目漱石 吾輩は猫である

夏目漱石 吾輩は猫である

この後、明治になって、夏目漱石の「吾輩は猫である」に出てきます。

(改行の後) 事件は大概逆上から出る者だ。逆上とは読んで字のごとく逆に上のぼるのである、・・・頭寒足熱は延命息災の徴と傷寒論にも出ている通り、濡れ手拭は長寿法において一日も欠くべからざる者である。・・・職業によると逆上はよほど大切な者で、逆上せんと何にも出来ない事がある。・・・


と、猫に言わせています。(濡れ手拭、とはカッカした頭を冷やすという意味です)
前後の文脈を考えますと、頭寒足熱は温度の意味ではなく、冷静活発の意味だと理解されていることは、はっきり分かります。

なお、文中にある「傷寒論」ですが、漢の頃(後漢末、建安年間(196-220))の本で、明治時代も漢方医術の最重要なテキストだったらしいです。しかし、傷寒とは、チフスやインフルエンザのような感染症ではないか、と言われているように、治療を目的とした本で、延命息災(養生、健康法のような)を目的として書かれたものではないのです。
その読み下し文(注解傷寒論)に当たってみましても、病気の症状や治療法をあれこれ言っているだけで、頭寒足熱が健康に良い、というな書き方はありません。そもそも、頭寒足熱、という四文字がないのです。

夏目漱石にしても、文学、小説として、猫が傷寒論を引き合いに出す、というとんでもない状況を設定しているのです。傷寒論に実際に書かれているかどうか、というより、傷寒論という、権威ありげな本を、もったいぶって、猫が講釈するという面白さを出すために、持ち出しているのでしょう。(漱石は「傷寒論」を、少し嘲って引き合いに出している、ように思うのは私だけでしょうか? 福沢諭吉は、漢方を役に立たないとして、排撃しています。そういう傾向は漱石にもあったのでしょう。))

イギリスに留学したことのある漱石ですから、頭寒足熱が、英語の
Keep your head cool by temperance and your feet warm by exercise.
または
A cool mouth and warm feet live long.
から来ていることわざだということも、知っていたと思われます。(それにしても、a cool mouth って、どういう意味なのでしょう? 温かいものを食べるな、ということか、たくさん食べるな、ということか、余計なお喋りをするな、ということか?)

家電の普及が「頭寒足熱」を広めたか?


家電が激烈に発達してきた、1950年代以降、電気による暖房(最初はコタツ、アンカ---1960年代には寝る時、小さな電気コタツを何人かで共有し、アンカはまだ練炭だったものです---から敷布、マット、エアコン、ついにはカイロ)が、どんどん広まってきました。それに伴って、頭寒足熱が、意味を曲げられ、電気暖房(部分暖房)売り込みのための、「健康増進」をうたう便利な用語として広まったのだろうと、思われます。(夏目漱石の後、昭和初期までの間にどうなったかは、今のところ、想像もつきません。)

先に引用しました
「続 日本のことわざ 金子武雄」 (教養文庫)昭和44年(1969年---この年、テレビアニメ『サザエさん』放送開始)初版
の頃には、曲げられた意味が既に定着していた、ということですね。

頭寒足熱とコタツ


ただ、日本にはコタツがあります。コタツが最初に中国から渡来したのは室町時代で、江戸時代には、かなり普及したと、言われています。(ウィキペディア
寒い冬にコタツ、というのは、頭寒足熱に余りにピッタリしています。「頭寒足熱」という言葉が生まれるや、直ちにコタツの意味に転化した、ということも考えられます。
しかし、江戸時代には「炬燵弁慶」という言葉もあったそうで、コタツの頭寒足熱も、あまり良いものとは評価されていなかったのでしょう。コタツは、おそろしく魅力的なのに、健康にも一家の経済にもあまり役に立たないという、悩ましさがありますね。

1635年から1651年までの事情が、やはり、この辺の鍵を握っていますね。

夏目漱石は、むしろ英語の元の意味を知っていただけに、わざと意味をずらした、とも考えられないわけではありません。
まだまだ、調査の余地、価値がありそうですね。

頭寒足熱=コタツとみかんとテレビ、は健康的なの?


おかしいこととしては、「コタツとみかんとテレビ」は頭寒足熱にかこつけて、合理化されているところがあります。

ホカホカ コタツとみかん

しかし、もともとの意味である
Keep your head cool by temperance and your feet warm by exercise.
頭を冷静に、足はどんどん動かして暖かく、に完全に反しています。
動かすのは口だけ。情報を受け取るばかりで、頭はボーとして眠くなってくるし、体、足は動かさないものだから血行は悪くなり、コタツから出るのが嫌になるばかり。蜜柑食べ過ぎで血糖値は上がるし、虫歯の元。
「立っている者は親でも使え」となるし。まさに炬燵弁慶。認知症へまっしぐら。とても、健康的とは思えません。

貝原益軒を始め、歴史的にいろいろな健康法がありますが、「コタツに入って頭寒足熱」というような健康法は、あまり見当たらないようです。(例えば「健康長寿を先人に学ぶ」小澤利男著

それよりも、エアコンをうまく使って、室内でも体操、家事に精出したら良いのです。連れ合いがあれば、お二人でダンスでもすれば、もっと良いでしょう。室内でも、首から上を、頭巾などで温かくしておけば、体を少し動かせば、低い温度設定のエアコンでも、すぐ汗をかくほどになってきます。そうなれば、頭巾を脱いで、簡単に調節することができます。(→簡単 頭巾の作り方

一番良いのは、手袋、マフラー(マフラーは役に立つ部分は少し、邪魔になる余りがほとんどで、どうかと思いますが)、ネックウォーマー、防寒帽をして、外へ出て活動することです。気持ちを冷静に保って、家の中で、外で、体をどんどん動かすこと、これがもともとの頭寒足熱なのです。(いや、冷静活発と呼んでほしいです、少し語呂が悪いですが) そして健康への近道なのです。




参考サイト(大変勉強になりました、ありがとうございます)

「頭寒足熱」か「頭温足熱」か
広まっていることわざ(の解釈)よりも、自分の感覚を大切にされているのが、大変好感でき、励まされました。

以下、いろいろな研究を使わせていただきました。

四字熟語根掘り葉掘り9:「頭寒足熱」とオランダの名医

【四字熟語】「頭寒足熱」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターが解説!

頭寒足熱の語源

頭寒足熱は間違い? 頭も足元も冷やすべからず!

頭寒足熱とは? 東洋由来や医学的根拠とされる誤解と歴史を徹底調査した

(part 2) Q&A「頭寒足熱」の医学的根拠を教えてください「健」2012年 1月号 Vol.40-10 p.13-14

資料

原文『養生訓』全巻
養生訓 中村学園大学校訂テキスト

青空文庫 夏目漱石 吾輩は猫である

傷寒論をあなたのパソコンへ ユニコードで傷寒論

傷寒論の扉

注解傷寒論

傷寒論
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


ウェストミンスター寺院
"Thomas Parr
Keep your head cool by temperance and your feet warm by exercise. Rise early, go soon to bed, and if you want to grow fat [prosperous] keep your eyes open and your mouth shut."




辞書にはどう書いてある?

ちなみに、「頭寒足熱」をいくつかの辞書で当たってみました。(といっても、電子辞書1台です)

①大辞林

頭は冷やし、足は暖かい状態にしておくこと。よく眠れ、健康によいとされる。

②新明解国語辞典

頭を熱くせず、足を暖め(てよく眠)る健康法。

③明鏡国語辞典

頭を冷やし、足を温めること。安眠が得られ、健康によいとされる。

④新漢語林

[国](寝るときに)頭を冷やし、足を温めること。健康法の一つ。

[国]の記号は、「日本語特有の意味」ということです。
⑤類語新辞典

(よく眠れるよう)頭を冷たくし、足を温めること

⑥故事ことわざ辞典

頭を冷やし、足を温めるのがからだによいという、古くからの健康法の一つ。

⑦四字熟語辞典

【意味】頭を冷やし、足を温めること。安眠法の1つで、昔から健康によいとされる。
【例】小さいときから、お袋に寝るときは頭寒足熱にするようにと言われた。
【参考】A cool mouth and warm feet live long.(口を冷やし足を暖かくしておけば長命)/「頭寒足熱悪寒で湯たんぽ」

⑧ウィズダム和英辞典

(説明的に)keeping one's head cool and one's feet warm.


以上ですが、こうして並べてみると、また面白いですね。
②新明解国語辞典の「頭を熱くせず」というのは、新明解ならではの、よくよく考えられた(考えた結果、頭が寒や冷はないだろう、と)表現だと思います。でも、もっと考えて、語源までさかのぼってほしかったですね。
④新漢語林が[国]としているのは、「頭寒足熱」は、中国由来のものではないよ、ということです。
⑧ウィズダム和英辞典が、せっかくトーマス・パーの言葉の一部を引きながら、「説明的に」としているのは、全く残念ですね。英語には頭寒足熱に相当する表現はないよ、ということが言いたいのだと思いますが。

しかし、「頭を冷やし、足を温める」ですが、冬に敢えて頭を冷やし、夏に敢えて足を温めることが果たして、健康や安眠につながるのか? どうしても、変ですね。
「足熱」が、安眠法にしぼられてしまって、活発に体を動かす、という意味がなくなっているのも、面白いですね。弁慶(むしろ、これが本来の意味に近いように思います) から炬燵弁慶に、歴史的に転換してしまったのですね。
四季を通じたことわざとしては、やはり 頭温足温 か 冷静活発 が本来なのでしょうね。