チーズは糖質制限の味方です。しかし、原材料の高騰、円安で、値段が上がるのはやむを得ない、と思っていますが、包装はそのままで中身が減り、結果ゴミばかりの商品となり、このままプロセスチーズでいいのか? と最近迷っていました。プロセスチーズとナチュラルチーズ、一体どのように違うのでしょう?
プロセスチーズがナチュラルチーズを加工したものであることは、分かります。殺菌して保存しやすいように、「加熱して溶かし、乳化剤を加えて、練ったもの」というのも分かります。でも、乳化剤とは一体何なのでしょう? 成分に変化はないのでしょうか? この問題を、少しつついてみました。
ナチュラルチーズがプロセスチーズになるに当たって、成分の変化
プロセスチーズの原料は、セミハードタイプのナチュラルチーズ=チェダーチーズやゴーダチーズと言われています。面倒なので、チェダーチーズを原料として考えることにしました。
食品成分データベース からのデータを少し加工しました。
- 一般成分表-無機質-ビタミン類に限定しました
- 含有量のないもの、違いのないものについては除外しました
全て、チーズ100g当たりです。かなりの変化があります。
栄養成分 | エネルギー | 水分 | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 | 灰分 | 食塩相当量 | ナトリウム | ||
kcal | g | g | g | g | g | g | mg | |||
チェダーチーズ | 390 | 35.3 | 25.7 | 33.8 | 1.4 | 3.8 | 2 | 800 | ||
プロセスチーズ | 313 | 45.0 | 22.7 | 26.0 | 1.3 | 5 | 2.8 | 1100 | ||
栄養成分 | カリウム | カルシウム | マグネシウム | リン | 亜鉛 | 銅 | ヨウ素 | セレン | クロム | モリブデン |
mg | mg | mg | mg | mg | mg | μg | μg | μg | μg | |
チェダーチーズ | 85 | 740 | 24 | 500 | 4.0 | 0.07 | 20 | 12 | 0 | 7 |
プロセスチーズ | 60 | 630 | 19 | 730 | 3.2 | 0.08 | 19 | 13 | 2 | 10 |
栄養成分 | βーカロテン当量 | レチノール活性当量 | αートコフェロール | ビタミンK | ビタミンB1 | ビタミンB2 | ナイアシン当量 | |||
μg | μg | mg | μg | mg | mg | mg | ||||
チェダーチーズ | 210 | 330 | 1.6 | 12 | 0.04 | 0.45 | 5.5 | |||
プロセスチーズ | 230 | 260 | 1.1 | 2 | 0.03 | 0.38 | 5.0 | |||
栄養成分 | ビタミンB6 | ビタミンB12 | 葉酸 | パントテン酸 | ビオチン | |||||
mg | μg | μg | mg | μg | ||||||
チェダーチーズ | 0.07 | 1.9 | 32 | 0.43 | 2.7 | |||||
プロセスチーズ | 0.01 | 3.2 | 27 | 0.14 | 2.1 |
チェダーチーズを基準にして比較すると、プロセスチーズは、
- 水分が30%増えている=全体の100gで考えると、10%増えている
- タンパク質、脂質が減っている
- ナトリウム(食塩)が40%増えている
- リンが50%増えている
- クロム、モリブデン、ビタミンB12、βーカロテン当量が増えている
- 他はほとんど減っているが、ほぼ同じものも少しある
10%水増し
10%文字通り水増し、というのであれば、チェダーチーズとプロセスチーズをグラム数で比べて、コストパフォーマンスを考えても、しょうがない、ということですね。柔らかくて美味しいのに安い、なんて思ってましたが。
プロセスチーズの原料がチェダーチーズだけとは限らないので、一概には言えないのですが、大体、水分以外の成分比 55÷65=0.85 くらいに各成分が減っていることが、上の表から読み取れます。微量成分は、ほとんど減っています。
味を食べ比べてみました。プロセスチーズが穏やかとすれば、チェダーチーズはまさに濃厚です。チェダーチーズの方が食塩分は少ないはずなのに、濃厚味です。
例えてみますと、ご飯とおかゆの違いかもしれません。ご飯は水分が60%、おかゆは80%で30%増しです。チェダーチーズがご飯、プロセスチーズがおかゆになります。
ナトリウム(食塩)が40%増えている
プロセスチーズ製造に当たっては、乳化剤としてリン酸ナトリウムが使われると言われています。ナトリウムとリンが増えているのは、そのためだと思われます。
減塩している人には、プロセスチーズよりはチェダーチーズの方が、望ましいことになります。
リンが50%増えている
乳化剤として使われるリン酸ナトリウムのためだと思われます。リンは必要な栄養成分ではありますが、加工食品によく入っており、現代日本人は摂りすぎになりやすいと、言われています。プロセスチーズも、その加工食品ですね。
プロセスチーズは、安そうで、長持ちして、使いやすいのですが、以上のことを知ると、ナチュラルチーズと同等に比べることは、できなくなりますね。
いろいろな種類のナチュラルチーズ
ナチュラルチーズといっても、いろいろな種類があります。
例えば、ウィキペディアを訪問してみましょう。
おやつとしてチーズを考えるなら別ですが、食事としてチーズを考えれば、やはり、フレッシュチーズ系ではなく、プロセスチーズの原料にもなる、セミハードタイプのチーズということになろうかと、思います。セミハードタイプのチーズとは、
プレスして水分を少なくした半硬質チーズのこと。保存性が高く、食べやすいので日本でもおなじみのチーズです。
モントレジャック、ミモレット、レッドチェダー、マリボー、サムソー、ゴーダ、ノルベジア、ヤールスバーグ、ラクレット など
(チーズの三祐 楽天市場店 より)
ステッペン、ミモレット、ホワイトチェダーとかもあるみたいです。
上の栄養成分表の「チェダーチーズ」ですが、チェダーチーズとは、元々イギリスのチェダー村を発祥とするチーズなのですが、世界各地で作られるようになり、アメリカで色素を加えたレッドチェダーチーズが有名ですが、色素を加えないホワイトチェダーチーズもあります。生産量が世界最多の種類だそうです。
楽天で1kgのかたまりセミハードタイプのナチュラルチーズ
楽天で、うれしいことに、セミハードタイプのナチュラルチーズ(チェダーチーズ、ゴーダチーズなど)を、1kgのかたまりで売っています。とりあえず、4種類だけ紹介しておきます。(成分の単位は、すべて100グラム中のグラムです)
レッドチェダーチーズ(アメリカ)
タンパク質 24.3 脂質 32.9 炭水化物 0.3 食塩相当量 1.8
普通です。色があって、食卓を賑わせてくれます。

チェダーチーズ(オーストラリア)
タンパク質 24.3 脂質 35.2 炭水化物 0.1 食塩相当量 1.6
あっさり、かつ濃厚な味です。タンパク質+脂質の合計量が一番多いので、水分が少ないためか、切り分ける際にポロポロ割れやすいです。が、食べるのに差し支えるわけではありません、かえって、フォークで簡単に切り分けることができるので、利点とも言えます。また、チーズの香りは一番濃厚で、もう何10年も前に、初めてプロセスチーズを食べた時、「くさい」と思って、以後敬遠していたことを思い出します。今は、嗅いだだけでツバが出てくる芳香です。
うれしいことに、一番安く、かつ一番中身が濃い、おすすめ品ではないかと思います。

モントレージャック(アメリカ)
タンパク質 24.5 脂質 31.8 炭水化物 1.8 食塩相当量 1.7
モチモチして、蒲鉾に近い歯ざわりです。味は普通です。

ゴーダチーズ(オランダ)
タンパク質 23.0 脂質 30.0 炭水化物 0.0 食塩相当量 2.1
しっとりした腰があります、が、モントレージャックほどのモチモチ感ではなく、普通のプロセスチーズに似た歯ざわりです。味も、さすが老舗の味わいで標準的というか、普通です。食塩は数字上は、少し高くなっていますが、塩味が特に気になるほどではありません。

値上げを避けてゴミが増えた、残念なプロセスチーズ
実は、以上のように、チーズのことを改めて考えたのは、値上がり(正確には内容減少)のためです。
ロシアによるウクライナへの侵略によって、世界的な食料の値上がり、石油高、円安、などでチーズ原料も値上がりしています。日本のメーカーは、値段を上げるのを抑えようと、内容量を減らしています。そのため、同じ商品のはずなのに、多くのゴミを買い込むことになりました。がっかりもいいとこです。
上に書きました チーズの三祐 楽天市場店 のように、輸入したナチュラルチーズを1kgのかたまりで、割安に売っている所もあります。1年前にも何度か買ったのですが、プロセスチーズの方が、扱いやすいと思って、通販をやめて、近所の店でプロセスチーズを買うようになりました。
ところが、こうして増えたゴミを買うようになってしまった現状で、改めてナチュラルチーズを通販で買おうかな、と思い始めました。通販でナチュラルチーズを買うのと、店でプロセスチーズを買うのと、コスト、成分をつくづく考えることになったのです。
その結果、以上のように、プロセスチーズよりは、ナチュラルチーズの方が良くて、安心でき、高くないものだと分かりました。ナチュラルチーズは、プロセスチーズよりは濃厚な味であり、個性があって、噛み心地、舌触り、味、香りの違いを楽しむこともできます。
もちろん、この通販のチーズの値段も1年前よりは値上がりしています。しかし、当たり前だと思うのですが、同じ内容量で、値段を上げているので、ゴミばかりが増える、ということがありません。
ブロックチーズをまとめて買って、切り分け、冷蔵保存
問題は送料です。1kgのブロックをいくつかまとめ買いして、少しでも送料を浮かそうと、せこく考えます。
チーズは、乳酸菌が働いており、食塩も含まれているので、結構長持ちします。賞味期限は「お届け後60日前後」となっています。加熱しなくても結構長持ちするのですね。冷蔵庫もない時代に広まったものですから、当然かもしれませんが。

保存方法は上図の通りです。ラップで包まれて、それをポリ袋で密閉して届きます。このままだと60日間は大丈夫ということでしょうが、これを実際に食べるためには、切り分ける必要があります。

切り分けが大変
この切り分けが、最大の難関です。1kgという大きさで、包丁は通るものの、結構固いくせに滑りにくいので、力がいります。切っている内に、包丁にチーズがくっついてしまい、さらに滑りにくく、切りにくくなります。そうなると、一旦、包丁を洗う必要があります。
包丁も、菜切包丁のような幅の広いもの、出刃包丁のような厚いものは抵抗が大きくて苦労します。三徳包丁のような、やや細めの厚くないものが向いています。

薄い色の部分は折れやすい鋼を支えるために柔らかい鉄で作られています。
また、刺身包丁のような片刃の包丁は、まっすぐに切り下ろすのが難しいです。両刃の包丁だとまっすぐに切り下ろしやすいので、おすすめです。それでも、まっすぐに切り下ろすのは、なかなかできません。(ちなみに「両刃包丁」とは、辞書などに書かれているように、上下や左右に刃があるものではなく、刃先が左からも右からも削って(実際は削ったわけではなくて、叩いて研いだのでしょうが)ある、断面構造が左右対称になっているものですー上図参照)
上下や左右に刃があるものは、諸刃の剣です。

この際、ついでに。両刃は、包丁では「りょうば」と読むものとばかり思っていました(地域差かな?)。「もろは」と読んでしまうと、それこそ諸刃の剣(もろはのつるぎ)となってしまい、背の方にも刃がついているものとなります。銅鉾タイプですよね。切るためというより、突き刺すための武器です。両刃包丁をもろは、と読んでしまうことで、諸刃の剣との混用が生じてしまうような気がしますが。
チーズナイフやチーズカッターというものもありますが、細かく切り分けるためのものであり、1kgのかたまりを半分に切ろうとするためのものではありません。
板餅を思い出しながら、エイヤと切る
昔は、暮に搗いた餅を、粉を振った餅用のし板に入れて板餅にし、少し固まって、包丁がまだ入るくらいになった頃に、切り分けたものです。ちょっと時期遅れになると、大変固く、切れにくくて、苦労したものです。セミハードタイプのチーズ切りは、それを思い出させます。

両刃の三徳包丁で切り分ける時、左右の手を使って、かなりの力をかけて押し下げますので、手の平が痛くなります。包丁の持ち手側は問題ないのですが、利き手ではない方、包丁の背を押さえる方の手が痛くなります。布巾などを使って、手に直接手が当たらないようにしたほうが良いです。
ここまで大騒ぎして、1kgのかたまりを買わなければならないのか、と嘆かれる方は、少しだけ高めになりますが、200gにカットしてあるものを買われた方が良いでしょう。
自分で切り分けると、どうしても、まな板、包丁、手などから雑菌が入るので、賞味期限とは無関係に早めに食べる必要があります。カット済みだと、開封しなければ、60日の賞味期限が有効となります。
実は、裏技=冷凍保存
実は、上で禁止されている冷凍保存が、結構いけるのです。水分の多いチーズは冷凍したら台無しになってしまいます。が、セミハード系のチーズは、水分が少ないので、冷凍・解凍しても、歯触り、舌触りは、それほど変わりません。
ケガをしないように、大変な思いをして、切り分け、ラップし、袋に入れ、冷凍保存して、その後、一切れづつ取り出して冷蔵庫内で解凍し、ゆっくり味わいます。「努力で稼いだな」と、凱歌を上げながら、いただくというわけです。
そのまま冷凍して、解凍してから、タッパーなどの容器に入るサイズに切って入れ、食べる前にフォークで、適当なサイズに切り分ける、という方法もあります。お皿に盛ったときの見栄えが悪いですが、簡単で、より長持ちする方法です。
もちろん、好き好きはあります。「冷凍保存して、せっかくのチーズが台無しだ」と思われる方もあるでしょう。そこは、自己責任でお願いします。力を入れて刃物を扱います、とにかく安全第一で。
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