ヨーグルトには、中温性と高温性があって、カスピ海ヨーグルトなどは中温性(20~30℃)、ブルガリアヨーグルトは高温性(約40℃)とされています。特に、春から秋までの間は、加熱が不必要な中温性の省エネが気をそそります。
でも、普通のヨーグルト=ブルガリアヨーグルトは室温ではできないのでしょうか?
実は、室温で、また違った美味しさのブルガリアヨーグルトができることが分かりました。
ヨーグルトメーカーを25℃にセット
以下話を簡単にするため、ここでは全て、タニカ・ヨーグルトメーカーの容器、本体を使った話です。
私はタニカの回し者ではありませんが、タニカ・ヨーグルトメーカーをおすすめするのには、理由があります。—①電子レンジで容器とスプーンをしっかり殺菌できる(植え継ぎする場合は、これは重要です)②出来上がりが分かりやすい③食べる時に、取り出しやすく、片付けが楽— だからです。
普通に、種ヨーグルトを入れ、殺菌済みスプーンでグルグル混ぜて、冷たい牛乳を加えていきます。蓋を閉めて25℃にセットします。時間は、とりあえず8時間くらい。冷たい状態から、25℃の状態になってくれれば、あとは室温まかせに放置します。
もちろん、室温が20℃以上あれば、最初からヨーグルトメーカーを使わずに放置しておく、という方法もあると思います。暖かい時期、暑い時期には当然の選択ですね。
48時間くらいで出来上がり
その8時間ではまだ固まりません。トロリともしません。24時間くらいでトロリとしてきて、48時間もすると、ようやく、しっかり固まった感じになります。(平年より暖かい3月のことです) それでも40℃での8時間に比べると、柔らかいです。これで出来上がりです。40℃ほど固くなく、酸っぱくないヨーグルトとなります。それ以上放置していても、様子は変わりません。
トロトロと柔らかい印象が、写真から伝わってきますか?
中温ブルガリアヨーグルトは茶碗蒸しの柔らかさで、少ない酸味
柔らかい茶碗蒸しのような舌触りです。同じ菌が、室温で発酵してヨーグルトになったものです。舌触りも味も、もはや、普通に考えるブルガリアヨーグルトではありません。
ここまでやって、ブルガリアヨーグルトの中蓋に次のような文章があるのに気がつきました。
明治ブルガリアヨーグルト なるほど豆知識1
ヨーグルトの上手な保存方法
ヨーグルトをおいしく食べるためには?
ヨーグルトは乳酸菌で発酵した食品です。
乳酸菌は温度が上がると活発に活動を始め、発酵が進行していきます。
製品は一度開封したら、しっかりとフタを閉め、10℃以下で保存し、早めにお召し上がりください。
と書いてあります。冷蔵庫に入れないと、室温では「活発に活動を始め、発酵が進行していきます」ということなんですね。実感です。40℃にならないと発酵を始めないわけではないのです。
「固まったらすぐ冷蔵庫へ」と考える必要はありません。時間がたつほど、発酵が進んで、乳糖が減り、酸が増えるだけです。特に、乳糖不耐症の人にとっては、より消化しやすくなります。でも、40℃発酵に比べると、酸っぱさが出にくいです。
安全のことを考えると、3、4日たってしっかり固まれば冷蔵庫に入れた方が良いかな、と思います。(食べやすいので、2日後から、早めにそのまま食べ切ってしまう手もあります) 冷やすと少し固くなりますが、市販のブルガリアヨーグルトのようには固くありません。
もともと40℃でも平気なのですから、夏になって室温が30℃を超えるようになっても、問題なく(速く)ヨーグルトになってくれるでしょう。それは、また後日に報告したいと思います。
ヨーグルトメーカーなしでも
ヨーグルトメーカーを使わずに、次のようなこともやって、作ってみました。
ドリンクヨーグルトにもなるかな? 最初の25℃加熱もないので、かなり時間がかかります。20℃の室温で3日かかりました。これが、楽な方法か、手間のかかる方法か、評価の分かれるところでしょう。
ブルガリアでのヨーグルト作り
日本乳酸菌学会誌/23 巻 (2012) 3 号の「ヨーグルトの温故知新 ― ブルガリアの伝統的なヨーグルト ― 科学することで生まれた研究成果 ― 堀内 啓史」https://www.jstage.jst.go.jp/article/jslab/23/3/23_143/_article/-char/ja/
によりますと、(読みやすいように適当に改行を追加しました)
ブルガリアでは、工場でヨーグルトが大量生産される時代になった現在でも、田舎の村に行くと、羊乳を使った昔ながらの自家製のヨーグルト作りが行われているところがある。
しかし、ただ漫然と作られているわけではなく、そこにはある厳格な決まりというべきものが存在する。一年中で最初にヨーグルトを作る日が決められているのである。それが、「聖ゲオルギの日」(5月6日)である。キリスト教の殉教者であり、羊飼いと家畜の守護神とされた聖ゲオルギをたたえる祝日であり、ブルガリアではこの日から家畜の放牧を始めるため、家畜の健康と豊穣を願って様々な儀礼が行われる。その一環としてヨーグルト作りがあり、この日の食卓には必ず新しいヨーグルトを載せなくてはいけないとされている。
村人達は、秋から冬にかけては乳搾りをせず、初夏の到来を告げるこの日に初めて乳を搾り、新しい乳を新しい乳酸菌で発酵させてヨーグルトを作る。そして、出来上がった新しいヨーグルトを家族全員、さらには村人全てを招いて一緒に食べながら、祝日を盛大に祝う。
このとき、使われる乳酸菌の起源として、ドリャン(和名:セイヨウサンシュユ)などの植物の葉にたまった朝露が使われることが多い。朝露の中に含まれる葉に付着していた乳酸菌がスターター(種菌)として作用するが、5月6日の朝露こそが最もおいしいヨーグルトを作り出すと昔から言い伝えられてきた。
こうして一度おいしいヨーグルトが出来れば、あとはその一部をスターターとして新しい乳に加えていくことで、その年の家庭のヨーグルトの味を守ることが出来る。逆に言えば、最初においしくないヨーグルトを作ってしまうと一年間それを食べ続けることになってしまうため、最初のヨーグルト(その後のスターターとなる)作りには最も気を遣う。
ヨーグルト作りは、夏の終わりを告げる「聖ディミタルの日」(10月26日)まで続く。この日は、放牧と乳搾りが終わる日でもある。村人達はその間に多くを作り置きしておき、この日以降は翌年の聖ゲオルギの日まで作り置いたヨーグルトを食べる。これが昔から続いてきた、ブルガリアにおけるヨーグルト作りの一年のサイクルである。
結構大雑把なものですね。いくら寒い季節とはいえ、作り置いたヨーグルトが、10月から5月まで保存できるというのです。といっても、現在は安全性の観点から、自家製はすすめられず、工場製のものが広まっているらしいです。
ちなみに、聖ゲオルギとは、聖ゲオルギオスとも言われ、ウィキペディアによると、
---「ゲオルギオス」はギリシア語に由来し、その原義は「大地(geo)で働く(erg)人」、即ち「農夫」を意味する。 時代、地域によって様々な音写・転写や訛化が存在する。
とのことです。殉教者、聖人で、英語では、 ジョージ George となるらしいです。
コーカサスにあるジョージア国の守護聖人でもあるそうです。(こんな、話が広がっていく「へえ~」話が好き。)
その自家製ヨーグルトの作り方というのは、
ヨーグルトの本場ブルガリアには、素焼きの壺で作る昔ながらの伝統的なヨーグルトがある。
絞りたての牛乳(または羊乳)を煮立てて人肌くらいに冷ましてから、素焼きの壺に入れ、前日作っておいたヨーグルトを種菌(スターター)として加える。
その壺を布で包んで保温して放置すると、発酵してヨーグルトになる。
発酵中に素焼きの壺が牛乳から水分を吸収し、牛乳が濃縮され、更に、壺の表面からその水分が蒸発する際に気化熱を奪うため「低温発酵」となる。
こうして作られたヨーグルトは、なめらかでコクがあり、非常においしい(以下略)
しかし、
昔は、各家庭で自家製ヨーグルトが作られていた。し かし、現代では、工業製品をスーパーマーケットや小売店で簡単に購入できることから、自家製ヨーグルトを作る家庭は少なくなってきている。
でも、まだこだわって続けている人々には、理由があるのでしょうね。
低温発酵ブルガリアヨーグルトは、このように非常においしいものらしいです。引用文での低温というのが、どの程度の温度を言うのかわかりませんが、人肌のものを、布で包んで保温、放置、ということですから、何時間も放置すれば、室温にだんだん近づいてきて、30℃を下回ることは確実かと思われます。
この記事で取り上げました、中温発酵は、引用文のように濃縮されることはありませんし、冷蔵庫から出して、(ヨーグルトメーカーで25℃)室温くらいに上げ、その後放置するという方法です。ふと思い立って、何気なく始めた中温発酵ブルガリアヨーグルトですが、いやはや結局、ブルガリアヨーグルトのオリジナルに近いものだったのですね。
ヨーグルトをどんどん作って、牛乳をたくさん食べよう
何千年も前からヨーグルト、ということは、せいぜい、沸かして殺菌し、種を入れるなどして、あとは放置か、寒い地域では布などで保温して、作られ続けてきたのでしょうから。ブルガリアのヨーグルトでは、壺の殺菌もどうなっているのだか。それで、元の乳より、はるかに長持ちしたのでしょう。
牛乳をそのままでは飲めない人が多い日本人にとって、栄養豊富な牛乳をたくさん摂れる方法として、手軽なヨーグルト作りをやっていきたいものですね。乳酸菌ばかりに目が行って、「1日にヨーグルトを100g」とか、チマチマ言うのではなく、十分発酵して、消化されやすい、手作りのヨーグルトを、1日に1リットルとかね。(カロリーを心配する場合は、お菓子はもちろん、ご飯、パン、麺などの糖質を減らしましょう)
↓タンパク質が足りない日本人の記事はここ↓
ブルガリア風にブルガリアヨーグルトを作ってみた
ブルガリアでどのようなヨーグルトが食べられているのか? そのまねをして、ブルガリアのブルガリアヨーグルトを偲んでみました。(多分、的外れでしょうが、まあ気持ちだけということで)
少し先に引用していますが、ブルガリアの方法は
1、絞りたての牛乳(または羊乳)を煮立てて人肌くらいに冷ます
2,素焼きの壺に入れ、前日作っておいたヨーグルトを種菌(スターター)として加える。
3,その壺を布で包んで保温して放置する
というものです。
素焼きの壺が牛乳から水分を奪い、牛乳が濃縮される、ということですが、これは今のところ無理なので、省きます。
壺を布で包んで保温する、というのがはっきりしないのですが、まあまあ、家庭での手作りですから、いい加減として、37℃から徐々に室温に下がっていく、としておきます。
これをまねしようとして、実際にやったことは、
1,牛乳を電子レンジで、(パックのまま触って)人肌程度まで温める。(750Wで、合計2分30秒くらい)
2,電子レンジで加熱消毒した容器とスプーンを使って、いつものように、明治ブルガリアヨーグルトのパックから種をとり、温めた牛乳でゆるめながら、1リットルにする。
3,ヨーグルトメーカーに37℃、2時間でセットして、スイッチON。
4,外蓋の上に布巾を1枚かけて、冷めにくいようにしておく。
というものです。
市販の牛乳は殺菌済みですので、煮立てる必要はありません。電子レンジで人肌くらいに加熱しましたが、温度はいい加減です。雑菌の混入を避けたいので、温度計も使いません。最初にヨーグルトメーカーに37℃、2時間ということで、人肌からスタートが保証されると思います。
ヨーグルトメーカーのスイッチが切れてからもヨーグルトメーカーの中にあり、上には布巾が掛かっていますから、温度の下がり方はかなりゆるいと思います。
なお室温はセットした時に、22℃でした。
一晩置いて、朝にはしっかり固まっていました。
さらに放置してみましたが、それ以上の変化はなさそうです。最初に37℃まで上げただけあって、その後の発酵は速く進んだみたいです。
結果ですが、やはりというか、固さも、酸っぱさも、高温性と中温性の中間、という感じになりました。それ以外は、特に違いは感じられません。水分が飛んで、もっと濃くなっていれば(ブルガリアのブルガリアヨーグルト)、さらに、とても美味しいかも知れません。
中温性のブルガリアヨーグルトに話を戻しますと、春秋の室温から真夏の高温まで、柔軟に対応できるのがブルガリアヨーグルトの強み、と言えますね。季節によって出来上がりが異なる、というのも楽しみですね。
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