バブル後「失われた20年」とか言われて、日本全体がぐにゃぐにゃになってきていますが、実は、この20年は、失われたタンパク質の20年なのです。日本人のタンパク質摂取量の変化を調べていて、驚きました。
糖尿病の広がり、介護・フレイル問題の広がり、新型コロナウイルスに対する弱さ、精神疾患の広がり(実感できませんが、そうらしいですね)、経済の停滞も、実は、このタンパク質摂取量の減少から来ている、そんな気のする私です。(この辺は、看板の経験主義に反するのですが)
タンパク質摂取量は、みんながお腹を空かせていた時代並に落ち込み
次の図は、驚くべきです。2016年のタンパク質摂取量は、1950年(戦後5年で、みんながお腹を空かせていた頃です)並みだ、ということなのです。
上のグラフは、1945年から2016年のものです。
さらに最近のものでは、下のグラフとなります。(国立健康・栄養研究所のたんぱく質摂取量の平均値・標準偏差の年次推移(性・年齢階級別)(.xlsxファイルです)より) これは、1995年から2019年のものです。2016年からは少し回復して、全年齢平均で、2019年は71.4gとなっています。
一番の成長期である10代後半の世代も、同じように、激しく減っています。これでは、体も心も大きくなれません。
タンパク質摂取推奨量に満たない4割近い人々
それでも、厚労省による1日あたりのタンパク質摂取推奨量(大人の男性で60から65g、女性で50から55g)を満たしているから、良いのでは? という考えもあると思います。
この「タンパク質摂取推奨量」が、そもそも色々の問題を含んでいます。が、それは、今後の記事として、上のグラフでは、タンパク質摂取推奨量を満たしていない人たちが見えません。
元のデータには、平均値とともに標準偏差もありましたので、それを元に正規分布曲線を描いてみました。(次の図) 平均値あたりが最も多くて、それから離れるほど、該当する人数は少なくなります。推奨量を、男女平均の60とすると、60より左にある人たちが、推奨量に満たない人たちの割合です。
上の分布曲線を、見方を変えて、積み上げ曲線で描き直しました。下のグラフになります。タンパク質摂取量が60以下の人たちが、4割近くいることが分かります。
新型コロナウイルスの2022年8月18日現在での、日本の感染者の合計数は、1640万と言われています。大変な人数ですが、タンパク質摂取が不足している人数は、この倍以上なのです。もし、タンパク質摂取不足4割弱と、1640万が重なっているとしたら、大変な問題です。
人間の体は、タンパク質と脂肪と水でできている
タンパク質が不足すると、体も、抵抗力も、何もかも、うまく維持できなくなるのです。要介護、フレイルと、タンパク質不足の問題も指摘されています。
胃腸の細胞は約5日周期
心臓は約22日周期
肌の細胞は約28日周期
筋肉や肝臓などは約2ヶ月間の周期
骨の細胞は約3ヶ月周期
細胞の新陳代謝が正常であれば身体は3ヶ月で新しく生まれ変わる。
(ウィキペディアより)
というように、体を今のまま維持するだけでも、タンパク質が必要なのです。主食中心の食生活でも、糖尿病に近づきながらも、生きていくことはできます。でも、いろいろな意味で、体が縮こまってくるのです。まず第一に意欲が失われてしまいます。抵抗力、回復力、活動力も失われてしまいます。感染症の時代に、これは大変な問題です。
アンチエイジングではなく、十分なタンパク質でプレイバック
アンチエイジングなどと言われますが、タンパク質をしっかり摂って、適度なトレーニングをすれば、10年前、20年前の体を取り戻すことは可能だと思います。アンチではなく、プレイバックです。糖質制限を曲がりなりにも始めてから、約2年、昔できなかったことが、いろいろできるようになりました。肌が、筋肉が、蘇って来るのが分かります。どこまでプレイバックできるのか、楽しみな日々です。
トレーニングをしている人たちには、肥満対策なのか、タンパク質も脂肪も制限している人が多いように思います。主食をしっかり食べても、しっかり運動すれば、糖尿病を防げる、ということなのでしょうか。でも、トレーニングで体を蘇らせるためには、その材料=タンパク質と脂肪が、絶対必要です。
主食中心だと、トレーニングは体を維持するのがせいぜいになってしまいます。トレーニングで体をよみがえらせるためには、タンパク質と脂肪を沢山摂ることが不可欠です。タンパク質摂りすぎの害は、ないと言われています。(いやいや、エビデンスがない、と抵抗する人も多いですが)
下の表で、フィットネスなど軽い運動をしている人も、「筋肉をつけたい人/体重を増やしたい人も」レベルのタンパク質を摂ることで、始めてプレイバックが可能になる、と考えるべきです。
弱くなった筋肉、固くなった筋肉、動きにくくなった筋肉をスクラップ・アンド・ビルトで作り直すのですから。
この表に、「年は取ったけど、体を若い頃並みによみがえらせたい人」の項目をぜひ入れてほしいものです。量は、当然、「体重1kgあたり2gが必要摂取量」となるでしょうね。私の経験として、それくらい摂取すると、実際、内臓から体調が良くなる気がします。植物油もせっせと摂取しているのですが、肌の調子も悪化の一途だったのが、改善のカーブを間違いなく描いています。体を動かそうという意欲も積極的に湧いてきます。車にかける費用もバス代も不要です。目や歯の調子も良くなりました。医療費がまったくかからないし、糖質系の食品は買わないので、物価上昇も気になりません。
「エネルギーバランス」からもタンパク質不足
一方、「望ましい栄養バランス」というものがあります。そこでは、「炭水化物50~65%、脂質20~30%、タンパク質13~20%」と、よく言われています。では、タンパク質13~20%とは、どれくらいの量になるのでしょう?
30~49才の男性で、座り仕事中心で少し運動もする人の1日の消費エネルギーは2700kcal
その20%をタンパク質で摂ると、540kcal->540/4=135g(鶏むね肉640g相当)
その13%をタンパク質で摂ると、351kcal->540/4=88g (鶏むね肉420g相当)
30~49才の女性で、座り仕事中心で少し運動もする人の1日の消費エネルギーは2050kcal
その20%をタンパク質で摂ると、410kcal->410/4=103g(鶏むね肉490g相当)
その13%をタンパク質で摂ると、267kcal->267/4=67g (鶏むね肉320g相当)
「望ましい栄養バランス」で考えると、必要なタンパク質の量は、かなり多いですね。最低でも、鶏むね肉1枚は、必要です。男性で20%となると、2枚。
では、厚労省による1日あたりのタンパク質摂取推奨量(大人の男性で60から65g、女性で50から55g)とは、何なのでしょうか? タンパク質を65とか、55gに抑えると、さらに炭水化物(糖質)が増えてしまいます。
タンパク質摂取必要量を、13%での男女平均で、(88+67)/2=78gとして、上の積み上げ曲線グラフを見ると、実に6割くらいの人が不足していることになります。20%(119g)で比べると、ほぼ全員です。
最初の方のグラフの元データでは、2019年の30~49才男女の平均は69.7gでした。消費エネルギーからの「望ましい栄養バランス」による計算に比べると、悲惨な数字です。平均消費エネルギー2375kcalを基準にすると、タンパク質は12%でしかありません。働き盛りの世代の恐るべき状況。
厚労省による1日あたりのタンパク質摂取推奨量、あるいは、望ましい栄養バランスからのタンパク質量、というものが、そもそもどうなのか、という問題が、まずあります。それらは、糖質制限の考え方からは、重大な、糖質過剰、タンパク質不足です。しかし、現実は、それさえ満たしていないのです。
「糖尿病予防食」の悲惨
手元にも糖尿病の本(「専門医が治す!糖尿病」)があるのですが、ネットを覗いて、糖尿病予防食にいくつか当たってみました。タンパク質という点から見てみると、いずれも悲惨な内容です。
手元の本では、材料中、タンパク質がそこそこ含まれるものだけを対象にして、合計タンパク質量(Total)を計算してみました。(いずれも最初のメニューです) ダシなどにもタンパク質は含まれますが、Totalに1をプラスすれば十分かと、思われます。()内がそれぞれのタンパク質の量gです。
朝食の1例は、ロールパン90g(9),ベーコン6g(0.7),ホタテ貝柱15g(2.5),牛乳120g(4),Total 16.2
昼食の1例は、ご飯150g(3.8)、鶏もも肉50g(8.7),牛乳60g(2),Total 14.5
夕食の1例は、ご飯150g(3.8)、カレイ70g(6.7)、豚もも肉10g(2),Total 12.5
以上の朝昼晩で、1日のタンパク質摂取量は、合計で43.2gとなります。
これでは、上に引用しました、「なにも運動していない人の必要なタンパク質量」48~54gにも足りません。「フィットネスなど軽い運動をしている人」の、72~90gには、遥かに足りません。ラジオ体操や散歩などをし、家事や趣味などに忙しい人には絶望的な、半分の量です。
本には、「栄養バランスに優れ、健康な人が食べても生活習慣病の予防になる健康食です」と、説明があります。だまされてはいけません。こんな食事をしていると、間違いなくフレイルです。しかも、血糖値スパイクに直接つながる糖質はたっぷり摂っていますから、これは糖尿病予防食というよりも、糖尿病誘導食です。長年のタンパク質不足で内臓が壊れて、もはやまともに食事できなくなった人にだけは、おすすめできるものかもしれません。
ご飯、パンは絶対、しっかり摂らなきゃ、と考えるから、メニューに柔軟性がなくなり、タンパク質、脂質を極端に削ることになるのでしょう。
十分なタンパク質、糖質制限で栄養失調を解決
日本人は現在、恐るべき栄養失調(タンパク質不足)にある、というべきでしょう。せっかく時間ができて、遊びはもちろん、家事や子育て、社会貢献に活躍できるはずの小年寄り(ひとまず、90歳以下と考えてください)の多くが、意欲も体力も失って、介護を必要とするようになるのも、やむを得ないというべきでしょう。「運動をしなさい」と言われても、長年のタンパク質不足で、その気力さえ湧いてこない。活躍どころが、半端でない足手まといになる始末。
もっと若い世代も、それほど元気ではない最盛期を過ぎて(私自身のことでもありました)、遅かれ早かれ、そうなってしまうのです。
タンパク質が慢性的に不足していると、筋肉が減り、肌も衰えるだけでなく、外からは見えない内臓、血管、骨、脳なども弱ってしまいます。気力さえ失せてしまいます。気力が失せると、運動する気も失せてしまい、糖尿病、メタボ、要介護にまっしぐらです。
親の介護を心配している方は、まずは親に、食事にタンパク質を増やすように(して)すすめてみましょう。食費は少し増えるかもしれませんが、介護の負担を考えると、安い投資です。美味しく食べて、健康になれるのです。「タンパク質をしっかり摂って、余っている時間で運動、体の手入れ、家事、社会貢献に励んで、子どもの厄介にならないようにしてくれ」と、はっきり言ってやるべきです。それこそが親孝行です。
骨粗鬆症予防のために、カルシウム摂取、運動が言われます。しかし、
人間の骨は約70%がアパタイトを主成分とするリン酸カルシウムでできていますが,アパタイトだけでなく残りの約30%はコラーゲンを主成分とする有機物でできています。骨はよく鉄筋コンクリートに例えられます。コラーゲンが鉄筋,アパタイトがコンクリートに相当しています。
意外に知らない私