アルカリ洗濯とは何でしょう? 重曹を使う? セスキ炭酸ナトリウムを使う? 炭酸ナトリウム(炭酸ソーダ)を使う? 水酸化ナトリウムを使う? 「アルカリ洗濯が有効か?」と考える場合、この4種類のものは、全く異なるものだ、ということをまず、理解する必要があります。
炭酸ナトリウムでの洗濯で、十分満足している立場で、アルカリ洗濯、石けん洗濯を考え直してみたいと思います。
合成洗剤の洗剤残りが嫌になって、アルカリ洗濯を開始
まず、説明が必要だと思うのは、アルカリ洗濯をなぜ始めたか、ということです。それは。忘れもしない、2019年『アタック ZERO(ゼロ)』が販売開始された年です。その臭さに参ってしまって、あれこれ試行錯誤、悩みに悩んで、結局分かったことは、
- 合成洗剤はいくらすすいでも、取れない、すすぎ残りがかなりある
- すすぎ残りのせいで、香料と共に洗剤自体の臭いが残る
- すすぎ残りが部屋干し臭などの元となっている
- 衣替えの時に、色や臭いでガッカリすることになるのも、そのすすぎ残りのせいである
ということです。
洗剤を減らしてよくすすげば、洗剤残りが減るというわけでもなく、一定量の洗剤は、布に付着して取れないのです。加温しない洗濯であれば、まず、繊維1gあたり洗剤0.2mg(500gの衣服では、0.1g)くらいは、いくらすすいでも残るというデータがあるのです。
この合成洗剤の問題については、当研究所別館の記事 「洗濯に合成洗剤は不要」 をお読みください。(この記事とかなり重複するところがありますが)
少し調べてみると、アルカリ洗濯はあまりパッとしないもののようでしたが、とにかく、合成洗剤以外の選択肢としてアルカリ洗濯を始めたのでした。その結果、アルカリ洗濯への自信が確定したのです。
重曹、セスキ炭酸ナトリウムでの洗濯機洗濯はアルカリではない
この記事を書き始めたきっかけは、次のページを読んだことにあります。
この「石けんライフ」のサイトは、真面目さを疑いませんし、役に立つページばかりですが、これに限っては、少しずれているのでは? と思わざるをえませんでした。でも、おかげで、アルカリ洗濯について、じっくり考え直すことができました。
そこには、次のような説明がありました。
水酸化ナトリウムのpHは13以上、手で触れないほどの強アルカリです。でも、セスキのpHは10程度の弱アルカリ性です。pHは、1違うと、10倍の差がありますから、セスキのアルカリの強さは、水酸化ナトリウムの1000分の1以下です。
洗濯用粉石けんの、標準使用濃度でのPHは10~11くらい、洗顔用石けんのpHも10~11です。これらと比較してみると、セスキのpH10は、洗浄を期待するには、あまりに弱いアルカリと考えられます。
洗濯は全自動洗濯機・・・を用いて、水道水(水温10℃)30リットル、セスキは20g、粉石けん(炭酸塩35%入り)は25g使用しました。
石けんや合成洗剤を使わずに、アルカリだけで洗えるなら、環境負荷も下げることができますが、上で述べたように、アルカリだけで洗える洗濯物は限られており、汚れ物と分けて洗うなら、まとめて石けんで洗った方が、合理的です。
「アルカリ助剤を使った洗濯は効果あるの?」より
引用のpHは、いずれも1%濃度のものと思われます。同じ1%濃度では、炭酸ナトリウムは、11.3くらいになります。pHでセスキとは1.3違うわけですから、引用によりますと、炭酸ナトリウムの方が、10の1.3乗=20倍くらい強い、ということになります。普通の粉石けんには、助剤としてセスキではなく、炭酸ナトリウムが35~40%くらい入っています。
引用内の使用例では、比較対象のセスキ20gに対して、粉石けんには炭酸ナトリウムが8.7g使われています。
セスキに対して炭酸ナトリウムが単純に20倍だとすると(石けん自体のアルカリは無視できるとして、炭酸ナトリウム8.7gとセスキ20gを比べて)、8.7×20/20=8.7倍粉石けんの方がアルカリが強い、ということになります。粉石けんの方が8倍以上強いアルカリなのですから、アルカリ洗濯しているのは、むしろ粉石けんの方です。セスキ洗濯の方が劣るのは当然の話です。石けんに比較すれば、セスキはむしろ中性洗濯というべきでしょう。
上の引用文にありましたが、
洗濯用粉石けんの、標準使用濃度でのPHは10~11くらい、洗顔用石けんのpHも10~11です。これらと比較してみると、セスキのpH10
の、「セスキのpH10」とは、1%濃度のことです。水30Lにセスキ20gでは、0.067%になります。1%の15分の1なのです。
粉石けんでの洗濯は、pH10くらい、セスキでは、pH9くらい
実際に、3Lの水道水に、ダイソーのセスキ炭酸ナトリウム2gを溶かしてみました。セスキの濃度は同じ0.067%となります。pHは9.0でした。洗濯している時には、「セスキのpH10」ではないのです。
セスキでの洗濯機洗濯は、石けん洗濯のアルカリ度と比べると、アルカリ洗濯とは言えないのです。
セスキ炭酸ナトリウムは、洗濯機での洗濯には向いていないのです。ざっと考えても、上の例で、粉石けん並みのアルカリ度にするには、8.7倍、つまり170gのセスキ炭酸ナトリウムを入れる必要があることになるのです。(実際にセスキ170gを入れて、石けんと同じpHになるか? 疑わしく思いますが)
重曹だと、1%(水30リットルだと、300g)入れても、pHは8.5にしかなりません。
ここらのナトリウム塩と、pHの関係については、当研究所の
を参照してください。
余談ですが、上記の「洗顔用石けんのpHも10~11」は、誤りです。市販の洗顔用石けんを実際に測ってみますと、8から8.5くらいです。洗 濯 用(固形)の打ち誤りでしょう。
洗濯機でアルカリ洗濯は、炭酸ナトリウムを使うものだけ
セスキ炭酸ナトリウムは、以上のように、アルカリ度が弱いので、肌への刺激も弱く、少量の水で手洗いの場合には、うまく使えば役立つと思います。しかし、洗濯機では、ほぼ中性洗濯になってしまうのです。
洗濯機でのアルカリ洗濯となると、粉石けんにまさに入っているように、炭酸ナトリウム以外には考えられません。しかも、石けんなしの、炭酸ナトリウムだけでも十分きれいになるのです。まさに、「アルカリだけで洗えるなら、環境負荷も下げることができ」るのです。
下に紹介したものは、5kg入りです。送料込みで、2500円くらいになりますが、1日30g使うとして166日、ほぼ半年分になります。(しかも、炭酸ナトリウムは洗濯以外にも、いろいろ役立ちます)

少量で試してみたい、という方には、1kg(メール便)のものもあります。
私はさらに突っ込んで、粉石けん洗濯とは、主に炭酸ナトリウム洗濯ではないか、という気がしてなりません。それほど、炭酸ナトリウム洗濯は、強力なのです。
炭酸ナトリウムはどれくらい入れるのか?
結論としては、0.1%(水30リットルに炭酸ナトリウムを30g)です。
しかし、この炭酸ナトリウムの量の問題は、次の記事にまとめました。こちらをご覧ください。
石けんでも、炭酸ナトリウムがないと、きれいにならない
「粉石けんが少ないときれいにならない」、とよく言われています。しかし、これは助剤の炭酸ナトリウムのことを言っているのではないかと思います。粉石けんの量が少ないと、結果的に助剤の炭酸ナトリウムが少なくなり、pHが下がります。すると、上の引用文にある、セスキのようなことになります。これが、「粉石けんが少ないときれいにならない」の真相かもしれません。
上の引用文にありますように、アルカリ度が足りないと、なかなかきれいになりません。助剤入りの粉石けんを規定量入れますと、アルカリ度は、pH10くらいになるそうです。
(私の、水30リットルに炭酸ナトリウム30gという通常の投入量だと、実は、pH10くらいなのです。これで十分きれいになります。)
無添加粉石けんの方が、助剤入りよりきれいになる、という宣伝文句もありますが、間違いだと思います。例えば、お風呂の固形石けん、液体石けんシャンプーですが、特に夏は体の汚れも多いので、冬に比べると大量に使うことになります。嫌気が差して、シャンプーには炭酸ナトリウムを加え、固形石けんはナトリウムを多めにして手作りしたくらいです。
宣伝文句とは逆に、助剤の入っていない無添加石けんの方がきれいになった、という意見は聞くことがありません。
粉石けんでも、主剤は炭酸ナトリウム
粉石けん洗濯も、主には炭酸ナトリウムできれいにしているのです。そういう意味では、炭酸ナトリウムが主剤で、石けんが助剤なのです。結局、炭酸ナトリウムをしっかりpH10になる程度まで入れる。そして粉石けんを少しだけ入れて、さらなる仕上がりを目指す、という方法が石けん洗濯の本来のやり方ではないかと、思います。
粉石けんの洗浄力を、泡の高さで判断している話も、よく聞きますが、疑わしく思います。炭酸ナトリウムが主で、粉石けんを少しでも、そこそこの泡は立ちます。そして、十分きれいに仕上がります。泡の高さのことは、粉石けんを沢山使ってほしい人たちによって作られた神話、のような気もしますが。(石けんの多さは、残念なことに、石けん残りの多さにつながるのです) 合成洗剤の宣伝では、もう泡のことなど言わなくなりましたが、石けんも同じことのように思います。
季節にかかわらず、無理やり石けんを規定量入れることで、石けん溶け残りを増やすことになってはいませんか? 規定量入れるのは、炭酸ナトリウムだけだと考えて、入れるとしても、石けんはぐんと少なめで、季節などで加減していけば良いのだと、考え直しましょう。
粉末合成洗剤も、炭酸ナトリウムが主剤
そのクサさであきらめた合成洗剤ですが、粉末合成洗剤には、洗剤自体より多くの炭酸ナトリウムが入っています。
炭酸ナトリウムの含有量は、数値としては、いくら探しても出てきません。石けんではすべて明示してあるのに、なぜ? 何か、わざと隠されているような気がします。
石けんと同様に、合成洗剤でも液体より粉末の方がきれいに仕上がる、という根強い意見があります。液体洗剤に炭酸ナトリウムを沢山入れると粘りがでるので、流通させることができません。液体と粉末による合成洗剤の洗浄力の違いも、結局、炭酸ナトリウムの量の違いから来ているのではないでしょうか。
例えば、一番人気の粉末洗剤「アタック 高活性バイオパワー」の成分は、
成分
界面活性剤〔23%、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム〕、アルカリ剤(炭酸塩)、水軟化剤(アルミノけい酸塩)、工程剤(硫酸塩)、分散剤、蛍光増白剤、酵素
とあります。23%の界面活性剤以外は、77%となりますが、「アルカリ剤(炭酸塩)」=炭酸ナトリウムはそのほとんどだと思われます。ざっと見積もって、60%以上と考えて問題ないと思います。

から計算すると、30Lの水で、炭酸ナトリウムは18×0.6=10.8gとなります。炭酸ナトリウム洗濯の30Lに30gに比べると、少なくなっています。でも、もし炭酸ナトリウム含有率が70%だとすると、12.6gとなります。なかなかの量です。いずれにしても、合成洗剤の場合も、主剤は炭酸ナトリウム、ということですね。すすいでも取れない合成洗剤を、わざわざ加えなくても、と考えるのはおかしいでしょうか?
(液体洗剤にもアルカリ剤が入っているものがありますが、大量の水で薄めるため、洗濯水はほぼ中性となります。アルカリの洗浄力は、上のセスキ同様、期待できません。)
アルカリ洗濯(炭酸ナトリウム洗濯)、やってみませんか?
特に、合成洗剤で日常の洗濯をしている方は、合成洗剤の害(肌への刺激、ニオイ、洗剤残り、部屋干し臭)がなくなって驚きますよ。詳しくは、当研究所別館の記事
を参照してください。
炭酸ナトリウムは、合成洗剤と違って、繊維に残ることがなく、水に溶けやすいので、2度のすすぎで、ほとんど全てなくなります。1度目のすすぎ水(排水直前)のpHは7です。クエン酸などの中和剤も不要です。
炭酸ナトリウムの入れ方ですが、まずは洗濯水を張って、2槽式の場合は洗濯物を入れる前に2,3分回しよく溶かしてから、全自動の場合は、別容器で溶かしてから入れるようにしてください。(かき混ぜが遅れると粒が集まって固まりやすいので、水を加えたらすぐかき混ぜてください)
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