喉のうがい-3段階うがいの提案

喉うがい

うがいの仕方については、ただ漠然と「上を向いてガラガラ」と、言われていますが、本当にそれで適切なのでしょうか? うがいについては、私は、人一倍やってきた自負があります。最近になって、「上を向いてガラガラ」だけでは、不十分であることが分かりました。喉の構造を考えて、3段階うがいを提案したいと思います。

長い間うがいを続けてきたけれど

実は、私、うがいについては、20年以上の実践者なのです。最初は、食後の口すすぎとして始めたのですが、一時、よく風邪を引いていたので、その対策の気持があったのでしょう。結構熱心にやってきたつもりです。

閑話休題
よく風邪を引いていたのは、冬場の脱塩症=少し暖かい時に、汗をかいて、熱中症のようになってしまう、という、おかしな経過でした。風邪の原因は、何と、食塩の控えすぎだったのです。冬場も適当に食塩を取るようにしてからは、インフルエンザ・ワクチンも打っていませんが、風邪を一切引かなくなりました。(塩っけのあるものがほしいと感じるかどうか、を基準にしています)
この体験から、「食塩の摂取量は少ないほど良い」という言説は信じられません。夏場の熱中症の多さと、この誤った言説との関係について、私はかなり疑っています。真夏に大汗かいて、塩分が不足していると、いくら水を飲んでも熱中症は改善せず、飲んだ水は小水に行くばかりで、フラフラになるのです。体験済みのことです。塩分と水分をしっかり摂っていれば、暑さにも強くなれます。
他の季節は塩分控えめで、汗をかくほどに暖かい時は、少量の塩分を余分に摂るようにすれば良いのです。

最近になって、鼻うがいもやってきました。鼻うがいのおかげで、鼻の奥はスッキリしてきたと自覚できます。

でも、喉の状態の改善は、遅々としたものでした。(若い頃、しばらくタバコを吸っていたのでそのバチで喉が荒れたのでしょう) もっと早く、楽に歌えるようになれないのか、と切実に思うようになりました。

上を向いてガラガラするだけでは駄目

メントルソーダで、喉のうがい」の記事では、うがい水のことを書きました。

うがい水に、普通の水道水ではなく、弱アルカリ性のメントルソーダを使うことは大変効果的です。この記事は、その続編です。

ここでは、どこを、何の目的で、うがいするのか? という主に場所のことを、考えてみたいと思います。3段階うがいの提案です。

調べてみましても、うがいの仕方といえば、うがい薬を使って、ガラガラ、くらいの事しか書かれていません。上を向いてガラガラ、それだけで本当に良いのでしょうか?

まず、考える必要があるのは、うがいで何をしようと思っているのか、ということです。

うがいで、何をするのかで、うがいする場所、仕方も決まってきそうに思います。

どこを、うがいするのかを考えて

うがいしながら、今、うがい液がどこにあって、どこを洗浄しているのか、改めて考えてみました。すると、いろいろなことが分かってきました。

下は咽喉部の図ですが、その青線で囲んだ全体が、うがいできれいにする必要のある部分ではないかと、思います。あ~と声を出している声帯の上から、喉チンコ、舌の後ろ辺りまでだと、思います。

何気なくガラガラうがいしていると、実際には、声帯の上から喉頭蓋(ものを飲み込むときに、気道に蓋をするもの)辺りに限られています。(下図の青線囲みの中の下部分

扁桃は複数ある

この辺を清潔にすることは、もちろん大切です。しかし、

横から見た図

実は、その上には極めて重要な扁桃というものがあるのです。扁桃とは、

咽頭は細菌やウイルスの感染を受けやすいため,粘膜下にリンパ組織が発達している。このリンパ小節の集合体を扁桃という。口蓋扁桃,舌扁桃,咽頭扁桃などがあり,リンパ球をつくったり食菌作用を行う。俗に扁桃腺とも呼ばれる。

ブリタニカ国際大百科事典 より

今注目されている、上咽頭というものは、ここで言われている咽頭扁桃を中心とした部分ではないかと、思われます。

ワルダイエルの扁桃咽頭輪

これらの扁桃は喉から鼻奥にかけてグルリと輪のようになっています。これをワルダイエルの咽頭輪と言うそうです。

ワルダイエルの咽頭輪=扁桃が輪のようになっています。点線は、この状態では見えないものです。

口を開けて、正面から見た扁桃の配置図 ワルダイエルの咽頭輪

口腔や鼻腔から侵入してきた病原体は、まずこのワルダイエルの咽頭輪の扁桃によって排除されます。ここは、このように抵抗体であるとともに、抵抗の結果、炎症を起こしやすのです。扁桃炎とは、よく聞く言葉だと思います。風邪を引いて、お医者さんに行くと、あ~んと口を開けて、腫れていたら「風邪ですね」となるわけです。

扁桃の慢性的な炎症=病巣感染

風邪とともに治ってくれれば良いのですが、慢性的な炎症となってしまいますと、「病巣感染」と言って、全身的な不調の原因になったりするそうです。新型コロナウイルスの後遺症と言われるものは、実は、この病巣感染が継続しているためではないかと、思われます。

NHKの記事「「コロナ後遺症」相談相次ぐ 実態と影響は? 厚労省が調査開始」によりますと、新型コロナ後遺症外来クリニック医師の次の話を伝えています。

患者の主な症状は鼻とのどの奥の上咽頭と呼ばれる部分が炎症を起こし、全身のけん怠感を訴える患者が多いほか、集中力の低下やめまい、頭痛などを訴えるケースもある

NHKの記事「「コロナ後遺症」相談相次ぐ 実態と影響は? 厚労省が調査開始」より

病院でのしっかりした治療を受ける必要があると思いますが、それ以外に、扁桃の洗浄を考えたうがいを毎日続けることも、効果あると思われます。

扁桃の継続した炎症=「病巣感染」は、大変危険なことのようです。

詳しくは、

病巣疾患とは?日本病巣疾患研究会 -JFIR-が目指すもの

をご覧ください

上を向いてガラガラだけでは足りない

そういうことですから、うがいをするに当って、この扁桃=ワルダイエルの咽頭輪を忘れずに、きれいに洗浄できるように考えて、うがいする必要がある、ということになります。上を向いてガラガラだけでは、この一番重要な部分が置き去りにされているのです。

上図の上3つ、咽頭扁桃、耳管扁桃は鼻の中、奥にありますから、鼻うがいの領域となります。この記事では省きます。鼻うがいについては、次の当研究所の記事をお読みください。

うがいは3段階で

上を向いてガラガラだけではなく、扁桃をしっかり洗うためには、次の3段階のうがいとして、考えてやる必要があります。

口の中をまず、ざっとすすいで吐き出して予洗浄する、その次のことです。

第1,普通のうがい=扁桃よりも奥にある声帯の上

最初に、一番奥=声帯の上辺りです。ここが、普通のうがいで、ガラガラやっている所です。下の図で、①の記号です。食道と気道が分かれる所ですから、気道入口が食物で汚れたままにならないように、しっかり、きれいにしておく必要があリます。

しかし、ここの一番下に当たる声帯の構造は、意外と複雑です。入り組んだヒダのようなものまであります。私自身、この記事を書くまで、考えもしませんでした。

「人体のふしぎ」矢沢サイエンスオフィス・編著 より

下の写真で分かりますように、通常は開いていて、声を出す時は、ほとんど閉じます。

「人体のふしぎ」矢沢サイエンスオフィス・編著 より

声帯のひだひだまできれいにするには、「ガラガラうがい」では、声帯が開ききっているので、不十分であることが分かります。

できるだけ高い声を出すようにして、いわば「カラカラうがい」で、声帯をできるだけ閉じるようにします。出てきた声帯のひだに、うがい水がよく届くように考えながらやります。

声がうまく、きれいに出せない、という人は、ここをしっかりとうがいするように、しましょう。

実際、声がうまく、きれいに出せなかった私は、ここを意識したうがいで、かなり改善して来ました。

第2,舌の奥=舌扁桃、梨状陥凹

これだけで終わって、ヤレヤレ、ペッとなっては、いけません。まだまだ、これからです。いよいよ、ワルダイエルの咽頭輪です。

次には、(休み休み息を継ぎながらです) 頭をさらに後ろへ傾け、口を閉じながら、もう少し上②の記号の辺り、舌の一番奥辺りを狙ってうがいします。

ここは、舌扁桃がありますし、梨状陥凹という複雑な形をしたものがあります。食べ物・飲み物、細菌、ウイルスがいかにも滞留しやすそうな所です。唾で洗い流されるのも、なかなか困難そうな場所です。

梨状陥凹は、食道と気道の分かれ道で飲食物を飲み込むと同時に気道にふたをして誤飲を防いでいる喉頭蓋のそばにある。梨状陥凹はくぼんでいて食べ物や飲み物がたまりやすく、下咽頭の中で最も飲酒や喫煙によるダメージを受けやすい。
(「下咽頭がん」より)
梨状陥凹

ここを、ガラガラと、しっかり、きれいにしましょう。

第3,喉の入口=ポピュラーな扁桃

まだあります。最後に、一番上、③の記号の辺りです。

頭をさらに後ろへ下げて、口をほとんど閉じ、うがい水が、もうこれ以上前には行けない、というような所です。舌の中ほどでしょうか。

こここそ、一番大切な所です。「扁桃が腫れている」と言われると、大抵はここ、口蓋扁桃です。私にとっては、ここが一番荒れていて、水でむせたり、タンの元凶だったりした所です。最近になって、やっと分かりました。お茶や汁物でむせる、という方は、ぜひ、③のうがいを、熱心にやってみてください。

ここも、しっかり、きれいにしましょう。荒れていたら、うがいの際に変な刺激を感じるはずです。一度に炎症をなくそうと思わずに、少しずつ、毎日続けましょう。

うがい水を替えて、①②③を通しで2度やると、かなり効果的かと思います。お好み次第です。無理しないで。

3段階うがいで、清潔に、炎症を解決

こうして、①②③の3段階うがいを続けていくと、清潔になっていくことはもちろん、扁桃の炎症がだんだん収まってきます。喉が楽になって、歌を歌う時に声を出しやすくなります。扁桃に余力ができますから、新型コロナウイルスなどの感染症に対する抵抗力が増します。

特に、梨状陥凹、声帯の炎症に対して、大変効果があると、実感できます。
というか、私の場合、ここが長い間炎症を起こしていて、声がうまく出せない、タンがよくでる、ということの原因になっていた、ということが、うがいで治ってくるにつれ、よく分かりました。
声をきれいに出したい、と思っている人には、ぜひとも、やっていただきたいと思います。
(この段落は2022/6/23追記)

まだまだ完治とは言えませんが、日に日に喉が改善して、歌声が伸びやかに出るようになるのは、励みになります。合唱団に参加できる日も、本当に来るかもしれません。(この段落は2022/8/19追記)

長い間続けていた、上を向いてガラガラだけとは大違いの改善速度です。日に日に改善、「今日は昨日とは違う!」と、思えるはずです。

うがいのついでにフェイス・ストレッチング

この時に、あごをシャープに保ち、ひたいの横ジワ防止と、ほおのたるみに効くというフェイス・ストレッチングも合わせて行うと、喉にも、顔にも大変良さそうです。

情報源は次の本です。

フェイス・ストレッチング/企画出版部(著者)|bookoffonline
ムックです。もう中古品しかないようです。

あごをシャープに! 第1段階うがい。

普通にガラガラでうがいした後、思いっきり頭を後ろに、顔を上にあげ、あごをいっぱいに伸ばし、口角も上げるようにします。これで、喉もよく伸びて、うがいで洗いやすくなります。高音カラカラすると、喉の奥の方(声帯)まで、しっかり、きれいになります。以上、第1段階です。

ひたいの横ジワを予防! ほおのたるみに効く! 第2,第3段階うがい。

その後さらに、前頭筋と後頭筋を使って額を思いっきり上げ、目を思いっきり開き、眉毛、目尻を思いっきり上げます

合わせて、口角から、目尻に続く筋肉(大頬骨筋)と、口角から目の下に続く筋肉(小頬骨筋)を思いっきり上げます。口を広げるというのでなく、大頬骨筋と小頬骨筋を使って口の端を持ち上げる感覚です。

こうすることで、第2,第3段階のうがいがやりやすくなります。ガラガラではなく、高音カラカラになってしまうしかありません。

喉もきれいに、顔もきれいに

眉毛を上げるから額のシワが深くなるのではなく、むしろ、上げる力=前頭筋と後頭筋のゆるみがシワとなってしまうのだそうです。後頭筋と後頭筋のゆるみや、まぶたを持ち上げる筋肉のゆるみは、美容的な問題だけではなく、眼瞼下垂や、眼瞼内反症から逆さまつげを招くことにもなります。(実は私は、逆さまつげ対策として、これを始めました)

大頬骨筋、小頬骨筋、二腹筋のゆるみも、いわゆる年寄り顔になります。さらに、美容的な問題だけではなくオーラルフレイルによる、誤嚥、肺炎にもつながります。

前頭筋と後頭筋、大頬骨筋、小頬骨筋、二腹筋を鍛えることを意識しながら、うがいを繰り返すようにしてみましょう。

フェイスストレッチが良いと分かっていても、鏡に向かって毎日やり続けることは、なかなかできるものではありません。でも、うがいとセットだと、続けやすいものです。健康と美容を一度に手に入れることができます。

ついでに猫背も矯正、虫歯予防

また、普通のうがいの仕方よりは、胸を張って頭を後ろに傾けることになるので、知らないうちに猫背対策をしていることにもなります。

猫背対策の後ろ反りなど、日常生活では、なかなかできるものではありません。しかし、うがいと合わせて、やってしまうことになるのです。

うがい水に、弱アルカリ性のメントルソーダを使うことで、知らないうちに、念入りに虫歯予防、歯周病予防をしていることにもなっています。

3段階うがいには、このように様々な効果があります。

新型コロナウイルスに感染するのは、統計的に例外者 -めざせ、例外からの脱出

日本の新型コロナウイルス感染者数は、2022年4月15日現在で、約720万人だということです。日本の人口1億2千万人として、感染者数は6%です。統計で94%といえば、ほとんどがそこに収まる範囲です。誠に失礼ですが、例外的な人だけが感染している、と言えてしまうわけです。(少し乱暴だとは思います)

この例外的な人々は、実は、扁桃が慢性的に荒れていて、抵抗力に余力がない人々である、という可能性は無いでしょうか?

ぜひ、喉全体の洗浄、扁桃炎回復をプラスした、3段階うがいで、例外からの脱出を目指していただきたいと、思います。

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