ベランダ菜園にpH計(土壌酸度計)は必須

ベランダ菜園

(屋根付き)ベランダ菜園を楽しんでいるのだが、どうもパットしない、うまく育たない、いつも過湿で枯らしてしまう、と悩んでいる方、ぜひ、これを読んでください。

培養土はそのままでは使えない

培養土といえば、ホームセンターやネットショップで売っていて、簡単に購入できます。「そのまま使える」とか書いてありますね。でも、その培養土をそのまま使ってきた10年、それは苦労続きのベランダ菜園でした。

野菜や花に、適したpHがあることはご存知でしょう。
しかし、「野菜用、花用として売っている培養土なんだから、pHのことは心配する必要はない」「元肥入りなんだから、植えたり、蒔いたりした後は、水やりと追肥の心配だけすればいいんだろう?」と考えるのが普通というものです。

10年間の、屋根付きベランダ菜園での苦闘を経て、それまでの土を一切処分してから、昨秋pH計(土壌酸度計)を手に入れて、新規購入した2種類の培養土を計ってみて、その結果が驚きでした。

ある培養土のpHは7から8.5、別のは4.0から3.0以下が表示された

1種類の培養土に、pH計をブスブス差してみると、pH7から8.5が表示されました。
もう1種類の培養土で、同様にすると、pHはLo(3.0以下)から4を表示します。

どちらも信じられない数字だ。pH計が頼りにならない、と思って、苗を植え、種をまきました。ところが、結果は散々でした。

pH計がダメなのではなく、培養土がダメだった

これは、pH計がダメなのではなく、培養土がダメなのかもしれない、と思い直して、アルカリ性の培養土には強酸性培養土を加え、強酸性培養土には苦土石灰を加えて、いずれも、pHが6前後になるように調整して、植え直し、蒔き直しました。その結果はバッチリでした。花も野菜もスクスク育っています。

弱アルカリ性の土では、たいていの野菜や花は、うまく育たない

振り返れば、10年間の苦労続きのベランダ菜園、その原因は、pH7から8.5の培養土でした。最近買ったアルカリ寄りの培養土が、最近の数年間使っていたのと同じものだったのです。しかも、「苦土石灰を入れましょうね」と書いてある本の通り、季節が変わって、作物を変える度に、律儀に苦土石灰を入れ続けてきたのです。

弱アルカリ性の土で、フラフラ状態でも、なんとか、(悪いとはいえ)育っていた作物は、ますますアルカリ化する土のため、最後には、枯れてしまうようになったのです。

雨の当たらない屋根付きベランダでは、土は酸性化しない

雨が当たる家庭菜園やルーフバルコニーでは、土は自然に酸性化してしまうようですが、水といえばpH7.0から8.0の水道水だけの、屋根付きベランダでは、アルカリ性の土はアルカリ性のままのようです。これに、更に律儀に苦土石灰を加えていたのですから、植物に適した弱酸性にはなりようがないのです。

地域によっては、さらにアルカリ寄りの水道水もあるでしょう。(東京では7.5という話があります) そういう所では、水をやる度に、土はさらに、弱酸性から遠ざかってしまうのです。屋根付きベランダ菜園は、非常に特殊な状態に置かれている、といえます。

一般的な園芸本や、園芸サイトでは、土作りについて色々書かれていても、pHのことは参考程度にしか触れてありません。「プランターで栽培するときは市販の培養土を用いましょう」「プランターに市販の培養土を入れ(某所の-ベランダでできるキッチンガーデン-から)」、と培養土だったら大丈夫、という雰囲気です。でも、屋根付きベランダ菜園では、市販の培養土はそのままでは使えないし、pHのことは、最重要(植物にとって死活的!)なのです。


屋根付きベランダ、と言っていますが、まあ上の画像のような所のことです。上階の床がベランダの庇になっているものです。風の具合で、雨が降りかかることはあるものの、世間がザーザー降りの雨でも、床が少し濡れる程度でしかありません。

pH試験紙での検査は、実用性なし

試験紙や、試験液を使ったpH検査はやっていました。しかし、はっきり言ってこれは頼りになりません。1箇所計るだけで大変な手間です。しかも、現実に表れる色は、色のリストにはないものです。

1から14までの1刻みのリトマス試験紙なら、色違いがはっきりしていますが、問題の5から8辺りまでを0.5刻みで計れるという試験紙の色見本では、微妙な色違いが印刷されています。しかも、大問題は、試験紙は濡らして使う、ということです。見本の色は濡れていませんし、つやがあります。乾いたつやありの色と、濡れた試験紙を見比べても、同じ色などどこにもありません。この、実際の試験紙の色を、色見本のどこに置くのか、最後は、本人の気分次第です。

「まあ、これかな」でpHを決めても、実際の役に立ちません。

ましてや、同じ土とはいえ、必ず不均一なものです。いくら、よく混ぜて、サンプルを取っても、それがその土の平均的pHだ、とは言い切れません。さらに厳しいことに、酸度調整後に、その時の結果を計りたいと思えば、またその作業を繰り返して、上澄み液を作る必要があります。酸度調整後に、すぐ計るのは、良くないのは分かっていますが(数日間落ち着くのを待つ必要がある)、さらに酸度調整を続ける必要があるかを見込むためにも、その時の状態を、仮に知る必要があります。

ここまでの苦労を重ねても、結果は本人の気分次第では、涙です。

手軽にpHを計れるデジタル式pH計(土壌酸度計)は意外と正確

しかし、デジタル式のpH計だと、ブスっと土に差せばすぐ数字に表れます。「そんなにうまくいくものかよ!?」と、長年思っていたのが、実は私でした。でも、10年の苦労は土壌のpHのせいかもしれない、という気持ちがいよいよ強くなってきて、ついにデジタル式のpH計を買うことにしました。迷いに迷って、シンワ測定の「デジタル土壌酸度計 A-2」を買いました。これが大正解でした。

シンワ測定 デジタル土壌酸度計 A-2 大文字

確かに、プロの使う高価なpH計のように、たとえば0.1単位まで、正確には出ないでしょう。表示も0.5単位です。精度は±0.5と説明書にはあります。(6.0の表示が出ても、正しくは5.5かも知れないし、6.5かも知れない、ということです) 校正のための標準液さえ、無いし、必要ありません。

でも、それでいいのです。十分です。大体どの程度のpHなのか、が分かればいいのです。そのままスイッチを入れると7.0を示します。それを精製水(コンタクトレンズ用)に差すと、7.0を示します。水道水でも7.0を示しますが、たまに7.5を示す時もあります。水道水自体が、時期によって7.0から少しアルカリ寄りになったりするのでしょう。これは、バッチリ校正済み、ということだと私は理解します。

ただし、取扱説明書には、「本製品は土壌専用です。故障の原因となりますので水や他の液体に挿さないでください。」と書いてあります。水のpHは、真似して、計らないでくださいね。

この一点だけでも、信頼できそうです。中性をしっかり表示してくれれば、アルカリ性や酸性で、0.5程度の誤差が出たところで、実際に植物がうまく育ってくれるかどうか、という栽培経験で、最終的には調整していけば、十分だからです。

一つの鉢で、あちこち差しまくると、いろいろな数字が出ます。当たり前です。実際の土は不均一なものです。ここで、仮に数値に±0.5の誤差があるかどうかは、たいしたことではありません。よく混ぜて調整した土を、プランターに入れて、あちこちブスブス差してみて、大体の平均でpH6あたりになっていれば、OKです。たとえば、その場合、数値は5.0だったり、7.0が出たりします。中性よりは、やや酸性寄り、というわけです。それで植物はバッチリ育っています。

ただし、土が乾いていると、アルカリ寄りの数値が出ます。実は、前述の酸性の培養土は、袋を開けてすぐ、そのままpH計をブスっと差したら、6.5だったのです。それで安心して、「アルカリ性の土で苦労してきたが、今度は大丈夫だ」ということで、すぐプランターに入れて、植えたのです。で、苗はだんだん調子をくずして、弱ってきたのです。種は双葉が出たきりで、しおれてしまったのです。その培養土は、袋の中では、かなり乾いていて、特に、上の方はサラサラでした。ですから、プランターでの実態(pH4以下の強酸性)とは違う、弱酸性の表示が出たみたいです。

pH計の先に何も当てないで、スイッチを入れると、7.0を表示します。完全に乾いている土だと、実態とは無関係に、7.0になります。pHを正しく計測するには、土を十分に湿らせてから(たっぷり水やりした状態)、土に差し込む必要があります。

試験紙や試験液で1日かかることが、2、3分でできる

土を調整中に、あるいは植木鉢やプランターに入れた後で、あるいは生育中に、土にpH計をブスブス差すと、その土のpH分布状況、傾向が分かります。

これを、(仮に20箇所だとして)pH試験紙や試験液でやると、おそらく早くて1日がかりでしょう。pH計だと、ブスブス、と、ゆっくり、ていねいにやっても、2、3分のことです。

pH計があれば、本気の土のpH調整が、ごく簡単なことになるのです。

植えた時のpHが、その後の生育で、どう変化して行くのかをつかんで、生育状況と突合わせると、今後のベランダ菜園にとって、大変役立つ情報が得られるに違いありません。pH試験紙や試験液だと、この生育状況との突き合わせが、まず不可能です。

pH計は、楽天の最安値で、↓です。(これには送料別、となっていますが、ショップのページでは送料無料となっていました)


決して安いものではありませんが、うまく育たなくて落胆、今までかかった苗代・種代、あげくに「ええい、もうベランダ菜園など、やめだ!」となるとかかる土の処分費、などを考えると、決して高いものではない、と考えるのは私だけでしょうか。

電池は意外と長持ちします。しかも、エネループが使えます。便利ですね。

根が水を吸えない-pH不適合で起きる症状

この10年間、pH不適合の土で植物が、どのようだったか、少し書いておきます。このような症状に苦しんでいたら、pH計を導入してみてください。

  • 買ってきた苗を植えても、生育が悪い。終了後にプランターをひっくり返してみると、根の伸びが悪い。
  • 苗が全く成長しないので、抜いてみたら、植えた当時の根は茶色くなっていて、新しい白い根が出ていない。
  • 陽が当たるとしおれる、その度に、やり過ぎと思いつつも水をかける。最後には枯れてしまう。抜いてみると、根が少ししかない。
  • 少し強い風が吹くと、株元がグラグラする。支柱で固定することが多い。
  • 枯れはしないものの、葉先が茶色くなって、成長が悪い。最後は枯れてしまう。
  • アブラムシがつきやすい。
  • うどんこ病にかかりやすい
  • 小さい内はなんとか成長していても、だんだん生育が悪くなり、花が咲く頃には、様子が悪くなり、実がほとんど取れない。
  • 同じ種類の花を、別な場所で、陽がほとんど当たらない場所で育てているのに、それは花を沢山付けていて、条件がはるかに良いはずの、このベランダ菜園の方が花数が少なく、ついには枯れてしまう。抜いてみると、根が少ししかない。
  • 花苗を買ってきて植えたら、しばらくは花を咲かせているが、いよいよこれから、という頃になると、枯れてしまう。抜いてみると、根が、最初に付いていた土から伸びていない。
  • 葉の色が薄い。肥料が足りないのかと思って、追肥するのだが、濃くならない。抜いてみると、根が少ししかない。
  • 花でも、葉物野菜でも、小さい内から、しきりにちっちゃな花をつけようとする。大きくなれないで、最後は枯れてしまう。抜いてみると、根が少ししかない。枯れる前に、少しでも種を残そう、という健気な生態なのかも知れません。
  • 発芽した双葉が、転げて倒れる。穴あけして、埋めるのだが、うまく育たないで、その内、枯れる。抜いてみたら、根がほとんどない。(これは、かなり末期的な状態です)

全体的に言えるのは、肥料分の吸収が阻害されると言う前に、そもそも、根を伸ばせない、根が水をうまく吸えていない、ということだと思います。「水やり3年」とか言う話もありますが、3年どころか、私は、水やりに10年間泣いてきました。結局、それは土のpHの問題だったのです。

アルカリ性の土で泣いてきて10年。昨年、土を全て処分し、新しく培養土を複数購入しました。ところが、そのうち1つは弱アルカリ性、もう1つは強酸性でした。どちらも、結局、同じような症状が、また現れました。

根がどんどん成長していれば、水を少々やりすぎたところで、暖かい季節であれば、翌日までには、ちょうど良いくらいになっているか、むしろ、また、やりすぎな程に水やりしなければならないはずです。寒い季節であれば、植物の反応も遅いので、重力により、水が鉢からすっかり出切ってしまうまでには、根が過湿で傷む間もありません。
元気なく、しおれがちなものだから、つい、頻繁に水をかけてしまうのです。実際、水を多めにやらないと、すぐにしおれてしまうのです。過湿は結果であって、原因はpH不適合なのです。

水浴法で挿し木の記事 ↓ にもありますように、根は水の中でどんどん伸びるのです。過湿だけが原因で根が伸びない、ということはありえないのではないでしょうか。

(今だから、コソッと言いますが、上の記事のジンチョウゲもバラも、その後、枯れてしまったのです。アルカリ性の土が原因でした。で、この「ベランダ菜園にpH計(土壌酸度計)は必須」の記事に続くのです。)

培養土のpHを調整してから、プランターや植木鉢を用意する

「培養土がダメだった」と、書きましたが、でも、メーカーの悪意や落ち度があるとは、言い切れないのです。

私が長年使ってきた培養土には「カルシウム入り」との表示があります。このカルシウムは、カキ殻とかではなく、消石灰などだと思われます。ですから、どうしても、ややアルカリに傾くのです。でも、この培養土を家庭菜園や、庭やルーフバルコニーなど、雨の当たる所に置くと(大抵の方はこれでしょう)、酸性雨で、すぐに中和されて、いい具合のpHになるに違いありません。

また、強酸性の培養土にしても、レビューをよく読むと、うまく育っている、という方ばかりです。あるサイトでは、おすすめ培養土のNo.1でした。多分、バラツキがあるのでしょう。私が購入したものが、たまたま強酸性の部分が集まっていたのでしょう。

つまり、培養土にはバラツキがあるし、雨の当たる場所用に調整されているかも知れない培養土を、屋根付きベランダ菜園に使うには、自分でpHを測定し、調整してからにする必要がある、ということです。

特に、pHを計りもしないで、本に書いてある通り、「とにかく苦土石灰を〇〇グラム」は、絶対にやめましょう。

購入した培養土は

ちなみに、培養土を調整するに際して、アルカリ性の培養土がほしい、酸性の培養土がほしい、ということがあるかも知れません。私が購入した2種類の培養土を、ここに紹介しておきます。

↓強酸性だった土です。アイリスオーヤマ 花・野菜の培養土

「このまま使える」には、今では笑ってしまいます。この強酸性は、大変しぶといです。アルカリ資材で、その時はそこそこのpH(中性から弱酸性)に持って行けて安心して植えたら、その後、また強酸性のものが出てくるようで、pHはまた、強酸性に下がってしまいます。

今は、消石灰で、中性を超えてアルカリ化(HH=pH9.5以上)させ、土中の強酸性物質とゆっくり反応=中和させ、しばらくpHの動向を見てから、次の手を打つようにしています。pH計がHHを示している土でも、数日するとpHは5や6に戻ってしまったりします。ということは、さらに3や4への傾向が予測されます。そういう場合は、消石灰を、もう少し追加まきします。

アンモニアなどの害が問題というより、強酸性への戻りが問題なのです。

試しに、HHの土に植えたり、種をまいたりすると、(中性にしたつもりで強酸性に戻ってしまった時より)植物が、はるかにうまく成長してくれるようです。強アルカリ性をはね返す、しぶとい強酸性の土の特性からくるものかな、と思っています。

とにかく、この「このまま使える培養土」は、使いこなすのに苦労する、とんでもない癖があります。

↓弱アルカリ性の土です。大宮グリーンサービス 花と野菜のプランター培養土

土のアルカリ化に泣いた10年を考えると、このような弱アルカリ性の培養土が一般的なように思います。
使い始めには、何とか育っていても、本やサイトに書いてあるように、何かあれば苦土石灰、などとやっていると、だんだん植物が育たない土になってしまいます。

「酸性の培養土だということで買ったのに、そうじゃなかった」ということもありえます。バラツキがあるし、メーカーで修正済みかも知れません。自己責任でお願いします。

調整後の今では、花・野菜はスクスク育っています。勉強になったことに、感謝しています。特に、強酸性の土を弱酸性にするのは、石灰類で簡単なのですが(といっても、実際は難儀しました)、弱アルカリ性の土を弱酸性にするのは、難しそうです。たまたま、強酸性と弱アルカリがそろったので、混ぜ合わせて、しのぐことができました。(ことはそれほど甘くなく、しのいだつもりが、また強酸性に戻っていて、泣かされました、後述) これも、感謝していま(したが、今は強酸性を恨んでいます、後述)。

酸度調整の方法(特にアルカリ性から弱酸性へ)は?

買った培養土のpHが満足できるものでなかった場合、酸性から弱酸性へ変化させるには、消石灰、苦土石灰、有機石灰(カキ殻、卵の殻など)、など、大抵の本や、サイトでは詳しく紹介されています。ここで今さら言及するまでもないことです。通常のプランターには、アルカリ資材の何々をこれこれの量で、という具合です。

でも、せっかくpH計があるのですから、少なめから初めて、混ぜてすぐ計り、数日置いて計り、1週間後に計り、ちょうどいい具合に持って行くようにしています。

強酸性培養土には、苦土石灰は形なし、消石灰が必須

しかし、上に紹介した「アイリスオーヤマ 花・野菜の培養土」は、なかなかにしぶとくて、苦土石灰を大量に入れてその時はpH6.0あたりでも、1週間置くと、また酸性側に戻っていました。苦土石灰を入れすぎて、またアルカリ化させては困る、と思い、どうしても苦土石灰を控えてしまいます。

その後、苦土石灰でそこそこ(pH6.0あたり)にして、次に、中性の有機石灰(カキ殻)をかなり多めに入れることにしました。日にちが経過しても、pH6.5辺りで収まってくれるだろう、と思いました。

また、ベランダ菜園は、中性から弱アルカリ性の水道水で水やりをするため、土は自然にアルカリ側に傾いていくはずです。pHの値が、希望する数字よりも低い(酸性が強い)としても、もし植物が順調に育っているのであれば、水やりの度に中性に近づいていくはずです。

ところが、事態はもっと深刻でした。その時は、pH6.5くらいで、これで良かろう、と植えていても、その後、だんだん酸性がひどくなってくるのです。日が経ち、気がついたら、pHは4や5、Lo(3以下)もあり。植物は、元気がなくなり、pH不適合の症状が出てきます。弱アルカリ性の水道水も、カキ殻も、形なしでした。

消石灰で一旦アルカリ性に持って行く

失敗から分かったのですが、(この強酸性培養土の場合)アルカリ性になるのを恐れないで、苦土石灰より強い消石灰を入れ、中性を越えさせる必要があったのです。しばらく放置して変化を待ち、強酸性に戻ってしまう(のです!)ようだと、さらに消石灰を追加するようにしました。

それで、アルカリ性になり、もし困ったことになれば、後述のように、クエン酸で中和、弱酸性に持って行けば良いのです。

雨に当たらない屋根付きベランダ菜園では、ついついアルカリ化を恐れてしまって、中途半端だったのが悪かったようです。

それにしても、この「すぐ使える培養土」、なかなか手が焼けます。このような騒ぎは、多分、たいていの培養土には、無縁なことだと思います。

こうして臨機応変に対応(? 苦労?)できるのも、pH計があればこそです。

アルカリ土はクエン酸で調整

さて、問題は、pH7.0を超えてアルカリ化している土です。

未調整のピートモスが、まずあげられます。が、ごく少量で済むとは思えず、ピートモスでまた土のかさが増えてしまいます。
硫安(硫酸アンモニウム)は、アンモニウム分が植物に吸収されると、残る硫酸分で土を酸性側に変化させる、と言われています。でも、のんびりした話です。これから使おうという培養土を何とかする、というものではありません。
硫黄という話もありますが、これは硫安以上にのんびりした話で、いつになったらアルカリ分を中和してくれるものやら、分かりません。実際に混ぜてみましたが、黄色い硫黄の粉は、燃やすわけでなし、いつまでも黄色い粉のままでした。りんなら火の玉の話も、本当か嘘か、ありますが、硫黄の粉を放置しておいて、亜硫酸ガスになり、吸湿して硫酸になって困った、という話はありません。

酸性雨に当てるにも、屋根付きベランダでは、無理なことです。で、思いました、トイレの酸性洗剤は、危険で、植物にも悪そうですが、他の酸性のもので、家庭にあるものといえば、クエン酸があるではないか! と。(酢もありますが、これは、なめても美味しいくらいで、非常に弱い酸なので、土壌改良に使えるものではありません)

クエン酸を土に混ぜる

クエン酸を水に溶かして、酸性雨の代用にならないか、と思って試してみました。が、これも、のんびりした話で、かけてもかけても、クエン酸水で洗っても、土のアルカリ性は、ほとんど動きません。ということで、一旦はあきらめたのです。ところが、実は、クエン酸は、かけ流すのではなく、粉のまま土に混ぜると良いのです。

粉のまま、適量(例えば、普通のプランターに、ティースプーン1杯、または半分、とか。でも実際に試してみてください。土の性質次第なので、目安も言えません。最初は少なめから)を土にかけて、よく混ぜます。さっそくpHは下がります。さらに数日置いて、pHを計ってみてください。適量であれば、弱酸性側に、いい具合に変化しているはずです。これをプランターに入れて、水やりしても、アルカリには戻りにくくなっています。

土の中のクエン酸は、アルカリ分と反応して、例えばクエン酸カルシウムになっているのではないか、と思います。鏡についたカルシウム分は、クエン酸をつけると、洗い流すことができるようになります。クエン酸カルシウムは、水に溶けやすいのです。土に水をかけると、流れ出てもクエン酸カルシウムとして流れ出てアルカリ分(カルシウム)を減らすでしょう。あるいはクエン酸が他の形で土と結合していて流れ出ないかもしれないと思います。これはすべて推測ですが、水をかけても、クエン酸が流れ出て土がすぐにアルカリ性に戻る、というわけではないことは、確かです。

クエン酸は、水道水に溶かすと、すぐにpH4あたりになってしまいますが、いろいろなものが混ざっている土ですから緩衝作用があり、そう極端にはpHは動きません。万一、しばらく置いて酸性側に行き過ぎてしまったとしたら、石灰系の資材で戻せます。(これではお笑いですが、クエン酸は弱い酸なので、実際には土を強酸性にすることにはなりにくいです)

自然に土がアルカリ化してしまった場合には、少しのクエン酸で、弱酸性に戻せます。プランターを用意する場合だけではなく、何かを植えているプランター等でも、クエン酸を微量振りかけて、表面の土をかき混ぜておくと、水やりの度に余分のクエン酸が下に降りていくのか、アルカリ性を全体的に緩和できたりします。これで、ベランダ菜園のアルカリ化にも対応できます。安心ですね。

例えば、↓のようなものがあります。残ったクエン酸は、飲食物に加えなくても、あれば、掃除や美容液など、いろいろ役立ちます。


この、酸度調整の問題は、まだ経験が浅くて、長期的にはどうなるか分からないところがあります。今後の経験を踏まえて、書き加えていきたいと思います。

土壌塩分濃度表示で適切な肥料やり

ここで紹介しています「デジタル土壌酸度計 A-2」には、「土壌塩分濃度」の表示もあります。これが大変役立つのです。

この「塩分」とは、塩害に結びつく(主に海水からの)食塩のことではなく、肥料分を含む様々な塩類のことです。(メーカーに直接問い合わせた結果です) 「土壌塩分濃度」とは、むしろ、土壌の塩類濃度の指標として使われる電気伝導率=ECのようなものではないか、と思います。

狭いベランダ菜園では、農家と違って、肥料のコストはほぼ問題となりません。「はえば立て、立てば歩めの親心」で、つい肥料をやり過ぎてしまう傾向があります。

肥料が多過ぎる土では、DANGERと表示

ところが、肥料をやり過ぎていると、この「デジタル土壌酸度計 A-2」を差し込むだけで、「DANGER」と表示されるのです。ガビーン!です。

とりわけpH不適合の場合、葉の色が薄くなります。成長が良くありません。そこで、つい肥料をやりたくなるのです。その結果、pH不適合に加えて、肥料過多となり、事態は最悪となります。

「DANGER」となったら、とりあえず肥料やりは中止です。葉の色が薄い場合、成長が悪い場合、pH不適合によるものか、肥料不足によるものか、しっかり見極める必要があります。

新しい培養土では、(上の2つとも)土壌塩分濃度は「NOR」でした。一つの目安として、信頼できそうです。

「△△日ごとに肥料を〇〇グラム」なんてことを、雨の当たらない屋根付きベランダ菜園でやっていると、自動的に肥料過多となります。

私の過去の失敗も、pH不適合が半分、肥料過多が半分、だったのだろうと思います。pHと肥料濃度をチェックしながら、植物の楽園を作っていきたいものです。

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